「農あるまちづくり」の拠点、三世代にわたって選ばれる街になるために。/環境コンビニステーション 館長 中島敏博さん

環境コンビニステーション
館長 中島敏博さん

環境コンビニステーション 館長インタビュー
環境コンビニステーション 館長インタビュー

「農あるまちづくり」の拠点、三世代にわたって選ばれる街になるために。

つくばエクスプレスの開通とともに開業した新駅「柏たなか」駅。もとは農村地域であった駅の周辺は、駅の開業に伴い「農あるまちづくり」というテーマを掲げた独自の取り組みが進められています。その中心的存在とも言えるのが、駅前にある「環境コンビニステーション」。今回は、「農あるまちづくり」の中心人物である、「環境コンビニステーション」の館長・中島敏博さんに、お話をうかがいました。

環境コンビニステーションの概要について教えてください。

環境コンビニステーション 館長インタビュー
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近年の傾向として、沿線・駅の開業とともに「まちづくり」を仕掛けることが通例になっています。柏たなか駅は「柏北部地域開発計画」の中にあって独自の「まちづくり」がすすめられています。

柏たなかエリアの田園風景
柏たなかエリアの田園風景

この辺りは昔から農業地域として有名で、カブやネギ、ホウレンソウが栽培されている、典型的な「農村」です。開発が起こらなければそのまま「農村」、人の出入りが少ない地域のままだったろうと思われますが、駅が開業したことで、地元の人が「農地を残したままで『まちづくり』を進めたい」という話があったそうです。そこから「農との交流でつくる健康と安らぎのまちづくり」というテーマが挙がり、それを基に「農あるまちづくり」を掲げて、新たなまちづくりが始められました。

環境コンビニステーション
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「環境コンビニステーション」の設置は、「農あるまちづくり」として実施している「農業体験農園の導入」「農ある景観形成」と一緒に挙がった取り組みのひとつです。私が館長として就任したときに、「農あるまちづくり」の「農」の担い手である農家を支援し、本当の意味で「農あるまち」にするために「地産地消・流通支援の推進」を追加しました。

「農あるまちづくり」実施のための事業内容について詳しく教えてください。

環境コンビニステーション 館長インタビュー
環境コンビニステーション 館長インタビュー

「農業体験農園」は、簡単に言えば「農業の学校」です。農家さんが農具や作付計画などを準備してくださることによって、ひとつの区間を借りて身一つで農業に携わることができるというものです。農家が苦手とするPRなど事務処理やコミュニケーションについて「環境コンビニステーション」が支援しています。
これは練馬区大泉学園で行われている事業をモデルにして、同じ方式で運営しているものです。「農業が続けられるようなモデルづくり」と「新しい住民が農業と触れあう機会をつくるための窓口」という役目を担っています。

11月23日開催の「収穫祭」に行ってきました!
11月23日開催の「収穫祭」に行ってきました!

次は「地産地消の推進」です。たとえば「朝市」のようなものを中心に据えています。駅前のスーパーマーケット「カスミ」に地元野菜を置いてもらうように交渉したり、料理講座で地元産の野菜を使った野菜料理を教えていただけるようにお願いしたりしています。意欲あるレストランと意欲ある地元農家を結ぶための試みも始めています。「地元の野菜を食べて暮らしたい」という目的を持った住民が住むことを前提にして、市場へ出す以外に、地元に卸して売り、地元で食べていく仕組みを構築することで、農業経営を安定させて、「農あるまちづくり」につなげたいと考えています。あくまで農業の継続を推進してくれる人に住んでほしい、という考え方が根本にあります。

環境コンビニステーション 館長インタビュー
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そして「環境コンビニステーション」活動の推進。これは「農あるまちづくり」を分かりやすく伝えるための情報拠点、インフォメーションセンターないしはビジターセンターの役割を果たしています。
街で得たポジティブな情報を瞬時に提供できるように、住民の人には「気軽なお喋りなどを通して情報提供してもらう場」、新しく来た人には「ここに来れば何がしかの情報が得られる場」として捉えてもらい、情報の循環を作ることで地域運営に貢献する場としての機能を担っています。

「農あるまちでのくらし」とは、農家と農地がそばにあることのメリットを最大限利用することです。農家が家の近くにあるから、地元の野菜を買える、地元のレストランで食べられる、そんなメリットのほうがデメリットより大きいよ、ということを伝えたいのです。
農業に何かしらの関心がある人には「自分で農業をやりたい人」から「地元産野菜の料理を食べたい人」まで段階があると想定して、それぞれに訴求できるような企画を作って、「農あるまち」を体感してもらい、街の一部になれるような仕組みづくりを整備する、それが「環境コンビニステーション」の取り組みです。

最後に「農ある景観形成の推進」は、柏市と区画整理施行者であるUR都市機構が中心になり、集落を形成している農家や農地を中心に「農あるまち」が体感できるように景観的な面で誘導していく取組みです。建築事業者にパンフレットを配布して「この取り組みに賛同してほしい」というお話をしています。

これらの事業は、何らかの経験がもとになっているのでしょうか?

環境コンビニステーション 館長インタビュー
環境コンビニステーション 館長インタビュー

私自身は、里山の研究者です。「里山の市民活動」を研究テーマにしており、学生時代は、里山の保全事業に携わっていました。約40年にわたり放置されていた里山の再生活動などを行う中で、「都会の人にとって里山がもっと開かれた場になれば、緑との関わり方が変わるかもしれない。多くの人を幸せにできる要素がある。」と、大学院で本格的に「里山が現代に残る意味」を研究しました。この地域は、大学の実習で使ったことがあり、「農あるまちづくり」をどのように進めたらよいかという相談も受けて「朝市」や「蕎麦講座」などいくつか提案もしていました。

その後、ここの館長になってほしいという要請を受けて就任したという経緯があり、今に至っています。今いろいろ実践している事業は、行政が準備してただ受け取るのではなく、自分達の手で緑を作り上げていくのが本来の姿ではないか、という私の考え方の表れでもあります。

学生さんも活動に参加しているようですね?

環境コンビニステーション 館長インタビュー
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「フィールドコラボレーション」といって、東京都が指定している「エコトップ制度」という資格の認定に関わる活動の一環です。各大学の履修生が公的組織でボランティア実習に行く仕組みを導入しているため、毎年数人がこちらに派遣されてきます。また、「食料資源経済学」を学ぶ学生が、オリエンテーション実習として、農業に関わる流通などを知るために、市場を見て、こちらを見学してもらっています。裏方として参加することで、学生さんに「まちづくりとは何か」を知ってもらえたらと思います。

「農あるまちづくり」に対する将来の展望をお聞かせください。

環境コンビニステーション 館長インタビュー
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「100年後・三世代目が、このまちへ帰って暮らしたい」と言いたくなるまちにすることが私の目標です。一世代目はこのまちを選んで住み、二世代目はその影響を受けて住む。けれど三世代目はこのまちに住んでいることが当然であり、良いも悪いもありません。その三世代目が、一度まちの外へ出て、外からこのまちを見たとき「ああ、このまちは、実は良いまちだったのだな。また戻って住みたいな。」と、全体の3割が感じて戻ってくれるようになったなら成功だと考えています。それがひとつの目標です。コーディネーターとして「地域自治」、「この街のブランドを自分達の手で構築できるような道のりを作る」ことができれば、私の仕事は役目を全うできると考えています。

この「環境コンビニステーション」の中にあるカフェは、まちの人の「交流の場が欲しい」という声を受けて、ボランティアさんの力を借りて、コミュニティカフェとして始めました。また、まちにある商店の事業者さん同士で「柏たなか商店会」を結成するための準備にも関わり、商店主がこの街の「まちづくり」に加わるための枠作りも進めています。まちに住む人がいろいろな形で「まちづくり」の担い手として入れるように、今も戦略を組んでいるところです。

最後に、この街の「魅力」を教えてください。

時間の流れが“ゆるい”ことと、飾らなくても良いことが挙げられるかなと思います。柏市にある「まち」の中でも、柏駅は商店街がいくつもあり、多くの人が住んでいる大きなまちで、「柏の顔」です。隣の「柏の葉」は、「スマート」「おしゃれ」「アート」「先端技術を駆使した暮らし」を中心にしています。
対して、柏たなかは「安らぎ」「飾らない日常」が魅力かなと思います。普段着の日常を送れるのが、柏たなかの街らしさです。遊んだり、おしゃれな所に行ったりする「非日常」なら柏の葉、けれど「日常」を送るなら柏たなか、というようにまちごとで棲み分けをするならば、他のまちとは違い「農家のそばで暮らせる、安らぎのまち」「のんびりと、時間を贅沢に使えるまち」であり、何より、子どもから見て「大人が楽しそう、幸せそう」にしている姿がまちに満ちている、そしてそれが自分達の将来と重ねられ、夢を持てる、それが柏たなかの「魅力」だと思っています。

環境コンビニステーション 館長インタビュー
環境コンビニステーション 館長インタビュー

今回、話を聞いた人

環境コンビニステーション
館長 中島敏博さん

この日は「朝市」が開かれ、盛況のうちに終了した後のインタビューでした。朝市で行われたイベントの様子も交えながら、「柏たなかのまちづくり」について、ご自身の研究テーマから将来のこと、今開催されている「蕎麦打ち講座」などなどを伺う中で、「敢えて未完成で提供し、小さな達成感を自分達で積み上げてもらうことで、自分達の手でまちづくりができているという実感を抱いてもらう」ということに深く頷かされました。 「農あるまちづくり」のために、今いる人達と、これから住む人達を結びつけ、柏たなかの「魅力」につなげる「環境コンビニステーション」。実はその存在こそが、柏たなかの「魅力」ともいえるのかもしれません。

所在地:千葉県柏市小青田291-1東99-3街区1
電話番号:04-7157-2861
http://www.kashiwatanaka.net/exec/eco_cvs.html

※記事内容は2013(平成25)年12月時点の情報です。

「農あるまちづくり」の拠点、三世代にわたって選ばれる街になるために。/環境コンビニステーション 館長 中島敏博さん
所在地:千葉県柏市小青田291番地1東99-3街区1 
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