和泉市立光明台中学校 野里 和宏校長先生


和泉市立光明台中学校
野里 和宏 校長先生

“つながり”を大切に、小中一貫教育を推進

1978(昭和53)年に開校した「和泉市立光明台中学校」。光明皇后の誕生にちなんで名づけられた光明池や「光明池緑地」に近く、風光明媚な自然に恵まれた心やすらぐエリアにある。良い学校とは、「子どもを通わせたい学校」「子どもが行きたい学校」「職員が務めたい学校」と話す野里和宏校長。“小中一貫”を掲げ、生徒、教師、保護者の“つながり”に重きを置く同校の概要、そして独自の取り組みについて話をうかがった。

1978(昭和53)年開校とお聞きしましたが、「和泉市立光明台中学校」の設立の背景や沿革について簡単に教えてください。

和泉市立光明台中学校 校区
和泉市立光明台中学校 校区

住宅開発というものを受けて、開校されたと聞いています。設立されたのは開発の前になりますので、当初は1学級でスタートしました。1991(平成3)年には、全校生徒が783人というピークを迎えました。現在は600名ほどに落ち着いています。生徒数を見れば中規模の中学校ということになりますね。

この40年弱で培った、「和泉市立光明台中学校」の伝統や校風について教えてください。

和泉市立光明台中学校 書道
和泉市立光明台中学校 書道

校風についてはすべての学年が仲が良いという特徴がありますね。上級生が先輩風を吹かせるのではなく、皆が同じ学校の生徒という意識を持ってくれています。先輩、後輩という序列はあまりありません。ただ、何か行事を実施するときなど上級生が先輩として行動してくれています。生徒たちは明るくて元気。まじめな子どもたちが多いですね。通っている生徒のご家庭は総じて教育熱心なご家庭が多いと思います。

教育目標に「美しい心」がくるのがとても印象的です。ほかに「高い学力」「しなやかな体」の3つを掲げられていますね。

和泉市立光明台中学校 壁画
和泉市立光明台中学校 壁画

「心の教育」というものがよく言われていると思います。それをいち早く教育目標に取り入れたという事です。心が美しければ、それはすべてに通じるものです。例えば人間関係であるとか、そうしたすべてのことに関わっていけるんじゃないかということで、歴代の校長先生が作られ、今もそれを踏襲しています。学校の目標は簡単に変えるものではありませんし、掲げた教育目標を受けて、何に取り組んでいくのかが大切なことになります。「高い学力」というのは、そのまま学力ですね。「しなやかな体」というのは、体格などは健康というものになってきますが、もうひとつの意味として、いろんな事柄に順応できる体づくり。粘り強さなど、心と密接に関わった体力を養っていこうということです。これらを教育活動のすべての中に盛り込んで行っています。

「福祉・人権教育を推進する」ことも目指していらっしゃり、平和人権学習も積極的に行われているそうですね。具体的にどのような学習か教えてください。

和泉市立光明台中学校 階段
和泉市立光明台中学校 階段

毎年8月6日の広島の日を、平和登校日という位置づけにして、平和教育に関する講演をしたり、映画を鑑賞したり、その行事には保護者の方の参加も募ったり、近くのホールを借りて実施しています。3年生は沖縄に修学旅行に行きますので、その時に学んで来たことをみんなの前で報告するなどの活動をしています。アフガニスタンに行って来られた戦場カメラマンの方を招いてお話をしていただいたこともあります。

クラブ活動も盛んに行われており、陸上部などが活躍されているようですね。

和泉市立光明台中学校 表彰
和泉市立光明台中学校 表彰

男子バスケットボール部は大阪府のベスト4、平成26年度3年生の中から2名が大阪府代表に選出され、都道府県別大会で大阪府が優勝する立役者になりました。またうち1名は、JAPANアンダー16のメンバーにも選出されました。また、男子陸上部の駅伝大会では大阪で6位になっています。部活動の数は少ないのですが、活発に活動しています。部活動は技術の向上というものももちろんあると思いますが、それと同時に仲間と一緒に努力することの大切さを考え、顧問の先生方は土日も関係なく熱心に指導していただいています。苦しいことに耐え、同じ目標を持って継続することは必ず将来に生きてくるはずです。先輩後輩という関係も学習し、先輩から学び、後輩に伝え、ともに伸びようとしている子どもたちの姿はすばらしいものです。

地域との連携も行われているようですが、実際にどのようなことをされているのですか。

和泉市立光明台中学校 防災
和泉市立光明台中学校 防災

全国的にも広がっていますが、本校区にも「地域教育協議会」があります。中学校区単位で組織されているのですが、光明台中学校校区では「かがやけ子ども推進協議会」というのがあり、校区内の2つの小学校と地域の諸団体の代表者が集まり、校区の子どもたちの健全な成長をめざし、さまざまな取り組みを推進しています。近くの光明台池の歴史を学びながらのフィールドワーク、を行ったり、今年度は地域をあげての防災訓練を実施しました。校区内のポイントに集まり、中学校に集合するというものでした。年配の方、車いすの方、小学生など、を中学生が支えて誘導することもできました。光明台中学校には率先して何事に対しても行動できる生徒が多いと思います。

PTAの活動も活発にされているようですね。

和泉市立光明台中学校 校庭
和泉市立光明台中学校 校庭

小学校のPTAさんと連携してフラワーアレンジメントやパッチワークなど、それぞれが作品を作り、市民文化祭に出展する活動がありますし、子どもに還元することを目的として、毎年、餅つき大会を行っています。前述の「かがやけ子ども推進協議会」にも積極的に参加していただいています。今後はますます小中PTAの繋がりが増していくと思います。

小学校の職員と合同で行う活動が活発なのでしょうか。

和泉市立光明台中学校 廊下
和泉市立光明台中学校 廊下

小中一貫教育の研究校としてのこの1年は、合同研修を数回にわたり実施し、交流を深めています。また、道徳教育に関しても3校の道徳教育推進教師が中心になってお互いの授業を見学し合う公開授業も行っています。また、親睦を兼ねたスポーツ大会を行ったり、地域の行事にも小中多くの先生方が一緒に参加しています。

小中の先生同士の交流を大切にされているのですね。

和泉市立光明台中学校 教室
和泉市立光明台中学校 教室

今、良く言われている小中一貫教育というものがありますが、光明台中学校区でも「6」と「3」ではなく、「9」として小中で一緒になって見ていこうとしています。義務教育は9年間と法律ではなっていると思いますが、便宜上「6」と「3」になっているわけです。その9年間を小中の先生で一緒に見ていこうというスタンスで先生方もやってくれています。「6」と「3」でプツンと交流が切れてしまうことは決して少なくありません。それをしっかり繋いでいこうという試みです。例えばですが、7年生、8年生、9年生でも良いと思うんです。「段差」というものを無くしていくことが大切。専門的な話になりますが、小学校と中学校の学習内容の中には、ダブッているところもあります。それは省くことができますし、繋がりがあれば、小学校でここの部分まで習ってきたということを把握することもできます。先生方の負担は増えることになりますが、子どものためにというなかで、先生方も一生懸命取り組んでくれています。そうすることで、PTAもつながります。教師が繋がり、子どもが繋がれば、親も繋がります。子どもたちのより良い成長も進んでいくと思いますね。

「和泉市立光明台中学校」が独自で取り組んでいる活動はありますか。

和泉市立光明台中学校 講演
和泉市立光明台中学校 講演

最近行ったのは「性教育」についての講演会です。国際ソロプチミストという団体から、産婦人科医さんを派遣していただいて、中学3年生を対象にすこしインパクトを強くやっていただいています。性感染症や望まない妊娠など、そういうものを含めて自分を大切に、何かあれば相談するようにという投げ掛けをしてもらっています。とても難しい分野ではありますが、誰かがしっかりと踏み込まなければいけないことでもあると思います。

和泉市立光明台中学校 スカイプ授業
和泉市立光明台中学校 スカイプ授業

もうひとつが、和泉市で初めての取り組みでしたが、スカイプでシンガポールとつないで授業を行いました。講師は小学4年の時に私が教えた教え子です。内容としては、「ICT機器を使うことでいろいろなところと繋がることができる」そういうことの生徒たちへの発信です。それと、教え子はいま、宝石デザイナーをしています。ですので、いわゆる「キャリア教育」にもつながる話をしてもらいました。初めてのことでしたから我々も手探りで始めましたが、生徒にはとても好評でしたね。

校長先生ご自身の目標はありますか。

和泉市立光明台中学校 図書
和泉市立光明台中学校 図書

「子どもが行きたい学校」「子どもを通わせたい学校」「職員が働きたい学校」、こういう学校をつくりたいと思っています。子どもたちが楽しく学校に来ることができる、学習も部活動もがんばることが出来る学校づくりを考えています。そのためにも、職員がさまざまなアイディアを出し、子どもたちにいろんな情報を発信をすることが大切かと思っています。40名の中から一人でも二人でも、何かを受け止めてくれたらいいと考えています。たとえば前述のスカイプの授業でも、あれを見て海外で働いてみたいと思う子がいたり、デザイナーをめざす子がいたりするかもしれません。何も関係ないと思う子がいてもいいのです。子どもたちにとって選択肢のひとつになればいいのです。いろいろな選択肢を私たちが提供することで、悩む子が出てくるかもしれませんが、それも学習です。そんな中から子どもたちが自分の進むべき道を見つけてくれたらいいと思っています。写真は直木賞を受賞された西 加奈子さんのコーナーです。西さんは「和泉市立光明台中学校」の卒業生です。

和泉市全体の教育についての考え方を教えてください。

和泉市立光明台中学校 お弁当
和泉市立光明台中学校 お弁当

和泉市は平成29年度からすべての中学校区で小中一貫教育の実施に向けて取り組んでいます。文部科学省でも制度化されることになりましたが、各学校の先生方がいろんな形で研修を続けています。課題もたくさんありますが、子どもたちのよりよい成長を目標に本校の先生も頑張っています。

また、大阪府内でも少ない中学校の完全自校式の給食があります。これは和泉市の自慢できるところです。小学校はもちろんですが、市内すべての小中学校で毎日暖かい、愛情のこもった給食を子どもたちは食べることができています。

最後に学校の周辺環境について教えてください。

和泉市立光明台中学校 校門
和泉市立光明台中学校 校門

最初にお話したように、ここは開発された場所になります。ただ、開発の段階で緑地を作る、公園を作るというスタンスを和泉市の方がやってくれました。そのため、グランドもありますし、体育館もありますし、公園もあります。それが今でも残っています。春はウグイスの声を聴くことができますから、環境的にはすごく恵まれています。光明台中学校区は住みやすい街だと思いますね。

和泉市立光明台中学校 校長
和泉市立光明台中学校 校長

今回、話を聞いた人

和泉市立光明台中学校
野里 和宏 校長先生

所在地:大阪府和泉市光明台1-28-1
電話番号:0725-56-3220
URL:http://www.city.osaka-izumi.lg.jp/school/jhsch/koumyoudai/
※本文内容は、2015年3月取材時のものです。

和泉市立光明台中学校 野里 和宏校長先生
所在地:大阪府和泉市光明台1-28-1 
電話番号:0725-56-3220
http://www.city.osaka-izumi.lg.jp/school..