市民が主役のコンパクトなまちづくりを。富山市の中心市街地活性の新たな取り組み
富山県の中央部から南東部にかけて広がっている富山市。面積は県全体の約3割、人口は約4割を占める県内最大の都市だ。富山市では現在、「富山」駅を取り囲む公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを目標に掲げ、数多くの新規事業が進められている。事業のキーワードは「市民が主役のまちづくり」。今回は、そんな富山市のまちづくりについて富山市中心市街地活性化推進課の柏木克仁さんにお話を伺った。
街が一体となり活性化に取り組む動き
――まずは「富山市中心市街地活性化基本計画」の概要や経緯について教えてください。
柏木さん:近年、富山市は全国の自治体と同様に人口減少と高齢化が課題となり、特に都市部では、過度な自動車依存とバス等の公共交通機関の衰退も問題視されていました。また、現在の富山市は2005(平成17年)に周辺の市町村と合併し、人口は富山県全体の約4割(418,686人 H27国勢調査)を占める大きな都市になっており、それに伴うごみ収集や除雪等の都市管理コストの上昇も深刻化する恐れがありました。これらの課題に対処するため、鉄軌道をはじめとする公共交通を活性化し、その沿線に移住や商業等の機能を集積させることで、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを目指し、「公共交通の活性化」、「公共交通沿線地区への居住推進」、「中心市街地の活性化」の3本柱を1つの指針として「富山市中心市街地活性化基本計画」が2007(平成19)年に全国に先駆けて国から第1号認定されました。
駅と街中の回遊性を高めてさらなる賑わいを
――まずは2007(平成19)年にスタートした「第1期中心市街地活性化基本計画」の事業内容について教えてください。
柏木さん:「中心市街地活性化基本計画」の先駆けとなった第1期では既存2系統の電車に反時計周りの片方向循環運行を追加し、駅と街中の回遊性を高める「市内電車環状線化事業」に取り組みました。その他、65歳以上の高齢者を対象に市内各地から中心市街地へお出かけの際に公共交通利用料金を100円にする割引制度「おでかけ定期券事業」の実施や、大規模商業施設や立体駐車場の再開発にあわせ、全天候型多目的広場である「グランドプラザ」を整備しました。
「グランドプラザ」の稼働率は現在、休日は100%、全日でも80%を超えています。高校生のダンスイベントやワイン会など多くの市民の方にご活用いただいています。その他様々な事業にも取り組み、第1期終了時の課題としましては、「富山」駅周辺と中心商業地区の回遊性のさらなる向上や北陸新幹線開業を見据えた積極的なまちづくりなどが挙げられました。
数多くの事業をスタート。魅力あるまちづくりを加速
――続いて、第2期の事業計画について教えてください。
柏木さん:第2期では、北陸新幹線開業を契機とした駅前広場等の富山駅周辺整備や南北のLRT(富山ライトレール・市内電車環状線)の接続などの公共整備から、旧大和富山店跡地に「富山市ガラス美術館」、「富山市図書館本館」などの複合公益施設の整備の他、シネマコンプレックスを核とした「総曲輪西地区第一種市街地再開発事業」などにも取り組みました。
さらに「富山まちなか研究室 MAG.net」という学生の活動拠点作りや、まちなかでの市民活動を支援する「まちなか活性化事業サポート補助金」制度など数多くの取り組みを行ってきました。
――様々な事業が行われていますが、市民の皆さんの反応はいかがですか。
柏木さん:フィンランド公認のサンタクロースを呼んでいる「サンタフェスタ」は、市民の方にとても親しまれています。もともとは「まちなか活性化事業サポート補助金」を活用していましたが、市民の方からはとても好評で、現在は事業化して継続的に行うイベントになっています。
さらに街中にフラワーハンギングバスケットなどの設置や、市内の花屋さんで花束を購入すると市内電車が無料になる「花Tram事業」、民間企業と連携して取り組んだ「自転車市民共同利用システム導入事業」や「京都大学」との共同でGPSを利用した歩行促進アプリ「おでかけっち」の開発を行うなど県内外の方にもご協力を頂いて、官民連携の新たな取り組みが行われました。
――第1期から第2期までで街はどのように変化したと感じますか。
柏木さん:路面電車の利用数は目標数値13,000人に対して13,889人と、緩やかですがV時回復し、さらに中心市街地の人口の社会増加も目標数値390人増に対して693人増で達成しました。少しずつ街は変化していっていると感じますが、「富山」駅の利便性向上によるさらなる回遊性の高まりとあらゆる世代が生涯に渡り安心して健康に活躍できる環境づくり(CCRC)への取り組みが必要だと感じました。
人が集い、賑わう誰もが活躍できる街を目指して
――現在進行中の「第3期中心市街地活性化基本計画」では新たな取り組みも進められているとお聞きしました。
柏木さん:「第3期中心市街地活性化基本計画」は、2017(平成29)年4月にスタートしました。目指す都市像は「人が集い、人で賑わう、誰もが生き生きと活躍できるまち」。中心市街地活性化に向け、61事業を市民・NPO・商業者等と協働で実施していきます。大きなものとしては「路面電車南北接続事業」が挙げられます。在来線の高架化に併せて、富山駅の高架下における路面電車の南北接続及び自由通路、駅前広場、都市計画道路を整備し、中心部と北部地区のアクセスや利便性の向上、駅周辺における土地利用の高度化を図ります。
――富山市桜町一丁目では新しい複合施設が建設中だと伺いました。
柏木さん:現在、市では伝統と革新が融合した商業・賑わいの再生を目標に、「桜町一丁目4番地区第一種市街地再開発事業」を進めています。地上18階建てのマンションやホテル、学校や商業施設からなる複合施設を整備し、賑わい拠点の創出によって地区全体の活性化を図ります。2017(平成29)年12月現在、建物自体はまだ建設中ですが、4月から先行して「富山大原簿記公務員医療専門学校」が開校しています。
また、「第3期中心市街地活性化基本計画」では子どもから大人まで市民の方が安心して生活できる健康なまちづくりを推進するための行政サービスを提供しています。その他、全国初となる市直営の「産後ケア応援室」や在宅医療を推進する「まちなか診療所」、「病児保育室」の運営など、幅広い世代が生涯にわたり安心して暮らすことができる環境づくりを進めています。
ゆったりとした時間が流れる魅力的な街
――最後に、「富山」駅周辺地区の魅力について教えてください。
柏木さん:北陸新幹線開業後、「富山」駅前は出店ラッシュで美味しい飲食店が多くなりました。前述の通り、市では中心市街地の活性化を進めており、富山市はさらに賑わいのある街へと変化しています。今後も市民の皆さんが主役となる魅力的なまちづくりを進めていきたいと思っています。
また、富山は雄大な自然とともに野菜や海鮮など食に恵まれた街で、空気も水もとても美味しいです。便利な街ですが都会とは違うゆったりした時間が流れているのも富山らしさの一つです。筆舌に尽くしがたい富山の魅力は体験していただくのが一番ですが、この記事をきっかけに富山の良さをより多くの方に是非知ってほしいですね。
富山市中心市街地活性化推進課
富山市中心市街地活性化推進課 柏木克仁さん
所在地 :富山県富山市新桜町7-38
電話番号:076-443-2054
URL:https://www.city.toyama.toyama.jp/toshiseibibu/chushinshigaichi/kasseikasuishin.html
※この情報は2018(平成30)年1月時点のものです。
市民が主役のコンパクトなまちづくりを。富山市の中心市街地活性の新たな取り組み
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