クラシックバレエで品格を磨き人生を豊かに/鈴木延子バレエスタジオ 宮尾みどりさん
「雑色商店街」を抜けた住宅街の一角に、地域の子どもたちが通うバレエ教室がある。40年以上にわたって、バレエ界をはじめさまざまな分野で活躍する人材を送り出してきた「鈴木延子バレエスタジオ」だ。鈴木延子氏といえば、名門バレエ団で活躍し、長年後進の指導にあたってきた日本バレエ界の立役者。現代表である宮尾みどり先生に、バレエをとおして伝えたいことや生徒さんの様子などを伺った。
技術とともに内面からにじむ美しさを養う
―「鈴木延子バレエスタジオ」の歴史・概要について教えてください。
宮尾さん:日本バレエ界の草分けである鈴木延子先生が40年ほど前にご自宅に開かれたバレエ教室で、このあたりでは一番古い教室になります。鈴木先生は橘バレエ学校の副校長で、学校附属の牧阿佐美バレエ団創設者のおひとりであり、ご自身も牧阿佐美バレエ団で踊っていらっしゃいました。昨年亡くなられた後は私がこの教室を引き継ぎ、講師2人と3人で教えております。
「鈴木延子バレエスタジオ」はクラシックバレエを基礎から教える教室です。鈴木先生はバレエの技術だけでなく、礼儀作法や型を覚えることによる物腰の美しさ、内面からにじみ出る品格を身につけてほしいとお考えでしたが、それがこの教室で一番伝えたいことです。また、どの生徒もわけへだてなく、芸術に触れることで人生が豊かになってもらいたいと思っております。
―ベビーから成人までを対象としたクラスがありますが、レッスン内容を教えてください。
宮尾さん:ベビー科では身体を動かすことの楽しさとリズムにのって身体を動かすことを学びます。バレエは海外では小学校3年生ぐらいから始めるのが一般的ですが、日本では習い事として3、4歳から始める子が多く、まだ筋力がないのできちんとは踊れません。それでも、踊ることや音楽を聴くことが好きなら、人前でスキップしているだけでずいぶん姿勢がよくなります。
小学2、3年生からはバーを使って、手足のポジションや角度など基礎をしっかり覚えていきます。バレエは型が一番大事なので、それを一からコツコツと教えていきます。その段階を経て3、4年生で足が丈夫になってきたらトゥシューズをはかせ、少し踊れるようになったらソロを与えます。ソロができるようになって中学生ぐらいになると、男の先生と組んでパ・ド・ドゥが踊れるようになります。その次にグラン・パ・ド・ドゥまで踊れるようになれば、その子のバレエ人生はかなり豊かになると思いますよ。
舞台は華やかですが、レッスンは毎回同じことの繰り返しで地味。それでもそのことを楽しいと思える子が残りますね。
―どんな目的でバレエを始められる生徒さんが多いのでしょうか。
宮尾さん:今いる子のほとんどは、幼稚園もしくは小学校低学年に入ってステップを積んできた子たちです。バレエを始める理由は、単純に見た目やスタイルがきれいだから。レオタードやチュチュを着るのは女の子の憧れです。また、お母様がせっかく女の子に生まれたならきれいになってほしいと、お子さんに習わせることも多いですね。もちろん男の子も大歓迎です。
最近のバレエ教室で増えてきたのが、体形維持や姿勢をよくする目的で大人になってから始める方たちです。この教室でも昨年から、成人クラスとは別に美容バレエとピラティスのクラスを始めたところ、「前からやりたかった」という方たちが入ってきてくれました。美容クラスは子育てを終えて時間に余裕ができた40代、50代の方、ピラティスは50代、60代の方が多いですが、みなさんいきいきと踊っていらっしゃいますよ。
発表会でステップアップ、牧阿佐美バレエ団への道も
―プロのバレエダンサーを目指す生徒さんには、バレエ団入団への道などは開かれているのでしょうか。
宮尾さん:今の子は塾や学校の部活で忙しく、なかなかバレエ一筋というわけにはいきません。それでも、高校生まで続けて、体形的に恵まれている子やプロになりたいという子がいたら、牧阿佐美バレエ団に推薦します。または大学へ進学しないで海外でバレエの勉強をする道もあるので、そのための後押しもしています。子どもの頃から優秀な子には、橘秋子記念財団が年に1回、全国から優秀な子を集めて開催しているオーディションを勧めることもあります。合格すると月に3回の特別レッスンが受けられ、大きな舞台でオーケストラと行う公演にも参加できるので、すごくいい経験になります。うちでも何人も合格しています。
ただ、今はバレエダンサーを目指している子ばかりではなく、宝塚や劇団四季でプロになる子がいたり、バレエ教室を開いたりピラティスの講師になる子がいるなど、昔に比べて選択肢が広くなりました。
―発表会についても教えてください。
宮尾さん:2年に1回、大田区民ホール・アプリコで開催しています。特徴のひとつは、舞台装置をつけての幕ものにしていること。バレエ団とほぼ同じ装置で、ここまで大がかりな発表会はよそではなかなかありません。また、鈴木先生は手縫いするほど衣装にとことんこだわる方だったので、衣装はすごくきれいです。毎回プロの男性ダンサーをお招きしていることも特徴で、大きい子が組んで踊ったりしています。
発表会ではお客さんから拍手をもらって、生徒はみんな「すごく楽しい!」と喜んでいます。たとえプロにならなくても、発表会が楽しくてバレエが好きになり、一生懸命やっている子もたくさんいるほどです。
―バレエを教えるうえで、どのような点を大切にされていますか。また、バレエを通じて生徒さんたちにどのように変化があると感じますか。
宮尾さん:とにかく基礎、クラシックの型を大切にしていますね。型を身につけることで品格が生まれます。また、コンテンポラリーと違ってクラシックバレエは音がないと踊れないので、音楽を聞いて音を表現することも大切。そして舞台を経験することです。
体幹を鍛え、内面から出る美しさがあると、どんなにお転婆の子でも歩く姿がほかの子と違うなと感じます。また、レッスンでポジションを覚えたり、発表会に備えてリハーサルすることで、今の子たちに足りない忍耐力がつきます。忍耐力がつくと行儀がよくなり、体力がつく。すると自信につながってきれいになります。さらに舞台を経験すると、どの子も上手になります。学校であまり得意なことがない子でも人前に出て自信がつき、それまで踊ることが楽しくなかった子が楽しくなります。
バレエはそんなに運動神経がよくなくてもいいんです。ちょっとのんびりしている子でも、型を覚えることで美しく表現できるようになるし、スポーツと違って芸術表現なので、テクニックで表現する子、雰囲気で表現する子と、その子のカラーがあっていい。きちんと練習してきた子は、お客様が見てわかるほど訴えるものがあります。一人ひとりの個性を大事にすれば、どの子も輝きますね。
生活しやすく、人のぬくもりが感じられる街
―最後に教室のある六郷エリアの魅力について教えてください。
宮尾さん:私は新潟出身で、橘バレエ学校と牧阿佐美バレエ団を経てここへ嫁いできたのですが、いいところですよ。多摩川が近くて、緑が多い。商店街やオーケーディスカウントセンターがあるので、買い物にも便利です。“雑色価格”というほど、物価が安いですね。近くの小学校は全部自転車で回れる距離ですし、「タイヤ公園」など公園も多くて、子育てにはいい環境です。雑色のほかJR「蒲田」駅と京急「蒲田」駅があってどこへでもアクセスしやすく、羽田にも近くて便利です。それから、とにかく人がいいですね。商店街の人が気軽に声を掛けてくれ、下町って目が届くというか、いつも誰かが見ていてくれるという安心感があります。
鈴木延子バレエスタジオ
代表:宮尾みどりさん
住所:東京都大田区仲六郷1-40-15
TEL:03-3731-8229
http://suzukinobukoballet.wix.com/ballet
※この情報は2016(平成28)年1月時点のものです。
クラシックバレエで品格を磨き人生を豊かに/鈴木延子バレエスタジオ 宮尾みどりさん
所在地:東京都大田区仲六郷1-40-15
電話番号:03-3731-8229
http://suzukinobukoballet.wix.com/ballet