「子どもは地域で育てる」を実践する風通しの良い教育/練馬区立上石神井小学校 副校長 高橋先生
「子どもは地域で育てる」を実践する風通しの良い教育
学校を中心とした様々な活動を通して、保護者・地域が一体となって子どもを育てている上石神井地区。古くからこの地域に住まう人々と新たに暮らす人々、保護者同士、子どもたちが、風通しの良く自然に交流できるこの場所は、教育のみならず生活の場としても良質な環境をつくりだしている。その活発な活動の中心にある上石神井小学校の副校長・高橋先生にお話を伺った。
上石神井小学校の特徴について教えてください。
何といっても、地域の方々との連携した取り組みが特徴です。普通、小学校での活動は児童の保護者が中心になることが多いと思いますが、本校では地域のボランティアの方々が核になって、自然観察や環境保護などの活動をする「自然探検隊」、放課後の児童の居場所「ひろば」と呼ばれる「学校応援団」、週1回子どもたちへの読み聞かせをしている「おはなし屋」など、実にさまざまな活動があります。もちろんそこに保護者の方々も参加することで、学校・保護者・地域が文字通り一つになって子どもを育てています。これが私たちの誇りでもあり、自慢でもありますね。
「自然探検隊」とは、どんな活動をしているのでしょうか?
「自然探検隊」は元学校の先生などが中心になって、保護者や地域の方々で結成されており、子どもたちが自然に親しめ、自然を大切に思えるような活動をしています。9月にプールの授業が終了すると、そこにヤゴのすみかを設置して幼虫を育てる「ヤゴ救出大作戦」が始まります。毎年500匹以上のトンボが、この上石神井小学校から飛び立っていき、なかなか感動的です。そのほか校内のビオトープや、カブトムシとクワガタの家「カブ・クワハウス」の設置・管理も自然探検隊と子どもたちが行っています。東京に住んでいても、こんな風に工夫をすれば虫や草花とこんな風に仲良くなれるという、見本のような活動です。
「学校応援団」、「おはなし屋」についても活動内容をお聞かせください。
「学校応援団」というのは、練馬区の児童放課後居場所づくり事業の一環で、一般には「ひろば」と呼ばれているのですが、本校の学校応援団は、その活動の種類や内容が非常に充実しています。地域の方が将棋教室を開いてくださったり、近くの学童クラブと連携して合同で遊んだり、とにかく多彩な取り組みをしてくださるので、子どもたちは実に楽しそうに放課後を過ごしています。
「おはなし屋」は、これもプロの朗読家や保護者、地域の方で組織されている団体ですが、毎週金曜日の朝10分間、子どもたちに読み聞かせをしてくださいます。各クラスに「おはなし屋」のメンバーが赴き、子どもたちの年齢や個性に合った本や紙芝居を披露してくれます。高学年になっても、子どもたちは自分に語りかけてくれるものはしっかり吸収するようで、前のめりで集中してお話に耳を傾けていますよ。私たちは、この10分間を使って朝ミーティングを行い、その後の授業に備えられるので、正直言うと本当に助かります(笑)。こんな風に色々な人たちが学校に来て下さることで、子どもを見守る目が増えることは、学校にとっても子どもにとっても、保護者にとっても有難いことだと感じます。
上石神井地区の雰囲気を教えてください。
上石神井は古くからこの地域にいらっしゃる住民の方々と、新たに移り住んでいらした世帯とが混在した街。だからこそ古いものと新しいものが共存できる環境があって、柔軟だと感じますね。学校への協力的な姿勢もそうですが、“熱い地区”だと思います。だからと言って、強制的に何かに参加させられるというのではなく、ボランティア活動や役員などにも自発的に動く土壌がありますね。保護者たちによる「安全・安心ボランティア」が結成され、入口に立って子どもたちへの声掛けや、不審者などの見回りをしていますが、今年も100名以上もの保護者の方がボランティアとして登録をしてくださり、自主的に学校内や入口付近を見守っています。強制ではなく、あくまでも立候補でこれだけの人数が集まるのは、やはり保護者や地域の熱心さ、子どもを思う気持ちの表れだと、頭が下がる思いがしますね。
隣の上石神井中学校とも連携して教育にあたっているとお聞きしました。
小中一貫といって、小学校から中学校への教育を途切れさせずにつなげていくための、プログラムです。例えばリトルティーチャーと呼ばれる中学生たちが、裁縫やリコーダー、組体操などを指導してくれたり、6年生には週1で中学の体育の先生が球技を教えて下さったりといった活動です。小学生は「中学生になったらこんな風になるんだ」「中学の先生ってこんな感じなんだ」と、様々な情報を受け取ることができ、とても充実しているようです。また来てくれる中学生たちも、実際は思春期の難しい時期なのでしょうが、ここに来ている時は非常に優しく丁寧に教えてくれるので、子どもたちもなついていますよ。
上石神井小学校の約70%の児童はこの中学に進学しますので、先生同士も顔見知りになって連携が取れるのは、とても良いですね。また中学の勉強でつまづきやすい個所を教えてもらい、小学校の時点でしっかり基礎を習得させるなど、勉強でもプラスの面が多いと思います。
上石神井小学校の児童のみなさんは、どんなお子さんが多いのですか?
私が他の小学校から赴任してきた時に感じたのは、「挨拶がきちんとできる」「先生との距離感が丁度良い」ということ。挨拶に関しては、転向先の小学校を探していた保護者の方が見学にいらした際、本校の生徒が次々と挨拶したことに感動して転入を決めたという話もあるくらいです。職員室への入退出時も、「失礼します」「○○室の鍵を借りにきました」とハキハキ話す姿は、今でこそ当たり前だと思いますが、初めて見た時は驚きましたね。また、先生との距離も馴れ馴れしくなく、よそよそしくもない。近すぎず・遠すぎず、の絶妙な関係を上手に保っています。このバランス感覚の良さが上石神井小の特徴だと感じますね。
今回、話を聞いた人練馬区立上石神井小学校 副校長 高橋先生 住所:東京都練馬区上石神井4-10-9 ※記事内容は2013(平成25)年7月時点の情報です。 |
「子どもは地域で育てる」を実践する風通しの良い教育/練馬区立上石神井小学校 副校長 高橋先生
所在地:東京都練馬区上石神井4-10-9
電話番号:03-3920-0805
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