ニーズや家庭の事情に応じて多様なサポートをきめ細やかに提供する練馬区の子育て支援/練馬区役所(東京都)
緑の多い恵まれた自然環境と都心部へのアクセスにも優れた子育てしやすい街として知られる東京都練馬区。なかでも東武鉄道東上本線「東武練馬」駅のある北町(きたまち)周辺は、川越街道の宿場町として栄えた歴史があり、商店街の賑わいや地域とのつながりを感じられるエリアとして注目を集めています。 今回は練馬区役所のこども家庭部を訪ね、練馬区の子育て事情や北町周辺の子育て施設、地域の魅力についてもお話を伺いました。
2021(令和3)年4月に待機児童数ゼロを実現した練馬区
――まず練馬区の概要について教えてください。
柳下さん:練馬区は23区の中で最も新しい区です。人口は23区で2番目に多く、2021(令和3)年4月時点で740,417人となっています。人口に占める年少人口つまり15歳未満のこどもの比率は11.8%で、他の区と比べても数値が高く子育て世帯の多い区です。
練馬区の子育てに関する話題で今もっとも注目されているのは、2021(令和3)年4月に待機児童数ゼロを実現したことです。2014(平成26)年4月に待機児童数は487人いたのですが、練馬区独自の待機児童ゼロ作戦を展開し7年間で7,000人以上の定員増を行ないました。
具体的には全国初となる幼保一元化施設「練馬こども園」の創設や、認可保育所等の新規整備に取り組みました。また待機児童数ゼロを継続するための取り組みも進めており、来年4月に向けて認可保育所を新たに7ヵ所整備する計画で、定員も381人増える予定です。
全国初の取り組みとして知られる幼保一元化施設「練馬こども園」
――「練馬こども園」とは?練馬区独自の子育て支援の取り組みについて教えてください。
柳下さん:「練馬こども園」は2015(平成27)年度に始まった幼保一元化の取り組みで、通年で11時間の預かり保育を実施する私立幼稚園を「練馬こども園」として認定しています。これは全国初の取り組みとしても知られています。
また2019(令和元)年度からは保護者の多様な就労ニーズに応えるため、9時間以上の短時間型や3歳未満のこどもを対象にした低年齢型も新設しました。教育と保育の機能を併せ持った施設として保護者の方から高い支持を得ており、今後も「練馬こども園」を拡大していきます。
民間カフェのスペースを活用して子育てを支援する「練馬こどもカフェ」
――「練馬こどもカフェ」という練馬区独自の取り組みもあるそうですが?
柳下さん:2019(令和元)年度に始まった取り組みで、民間のカフェなどのスペースを会場に、美味しいのみものを飲みながら、幼稚園や保育園の先生によるふれあい遊びや読み聞かせ講座や、離乳食の相談なども気軽にできる場所として開催しています。
申込を開始するとすぐに定員が埋まってしまう人気の事業で、当初3店舗からスタートしたこの取り組みも毎年店舗数を増やして現在は区内6店舗で実施しています。
保護者から支持をいただいている点としては、子育ての専門家である幼稚園や保育園の先生に気軽に相談ができることや、お子さんと一緒に遊んだり学んだりできることがあると思います。カフェでコーヒーを飲みながらリフレッシュしたりリラックスできるのもポイントのひとつです。
自宅で子育てをしているとどうしてもお子さんにつきっきりになってしまうので、気分転換も難しいでしょうし、ゆっくり過ごす時間もなかなか取れないと思います。「練馬こどもカフェ」に参加して、束の間でも楽しい時間を過ごしていただければと思います。
山根さん:育児相談については子ども家庭支援センターや保健相談所などでも窓口を設けているのですが、子育てやこどもの発達などについてすごく悩んでいるわけではないけれども、ちょっと相談できたら良いなとか、子育てをしている仲間と気軽におしゃべりできたら良いなといったニーズが多くあって、「練馬こどもカフェ」のような取り組みが求められているのだと思います。
タリーズコーヒーやスターバックスコーヒーといった馴染みのあるお店でも開催しているので、「ひさしぶりに行きたいな♪」という感覚ですね。
柳下さん:練馬区には乳幼児おやこ子育ての広場「にこにこ」という取り組みもありまして、0歳から3歳までの乳幼児とその保護者を対象にしています。2001(平成13)年から続く取り組みで、午前中に学童クラブ室を開放して親子で自由に遊んだり、保護者同士が交流できる場所として活用されています。
「にこにこ」には児童指導の専門職員を配置していますので、遊びに行きがてら気軽に育児相談ができる場所としてご利用いただいています。
感染症対策のガイドラインの策定やオンラインで子育て支援の取り組みを継続
――コロナ禍における変化などはありましたでしょうか?
柳下さん:「練馬こどもカフェ」についてはコロナ前からかなり需要は高かったのですが、コロナ禍になりこどもと出かけられる場所が少なくなったとか、遠出ができなくなって実家のある地方に帰れないといった状況もあり、参加いただいた保護者からは「息抜きになりました」とか「リフレッシュできた」といった感想がより鮮明に聞かれるようになりました。
山根さん:「練馬こどもカフェ」はカフェという飲食を伴う場所なので、感染症対策としてガイドラインを作成して開催しています。例えば手洗いやマスクの着用など基本的な感染症対策はもちろんのこと、子育て講座を行う場所と飲食をする場所とを分けるような工夫をしています。
柳下さん:お店に行くのが不安という保護者もいらっしゃったので、区としてもそのニーズになるべく応えたいという思いからzoomを使った「練馬こどもカフェ」のオンライン版を並行して運営しています。
子育てひろば「ぴよぴよ」もオンラインで行っているのですが、自宅にいながら育児相談ができたり子育て講座に参加できたりするのも非常に良かったという声をいただいています。引き続き今後もオンラインの取り組みは充実させていきたいと考えています。
一貫して運営することを最優先に考えてきた放課後の居場所づくり
――放課後の居場所づくりとして行われている「ねりっこクラブ」の現状についてもお聞かせください。
山根さん:「ねりっこクラブ」は2016(平成28)年に始まった取り組みで、小学生のこどもたちの放課後の居場所づくりを目的としています。簡単に説明すると学童クラブに入っているこどもとそうではないこどもが放課後も学校で一緒に遊べるというのが「ねりっこクラブ」の特徴です。
もともと「学童クラブ事業」と放課後の居場所づくりに取り組む「学校応援団ひろば事業」があり、それぞれの事業の機能や特色を維持しながら一体的に運営しているのが「ねりっこクラブ」です。
区内に小学校が65校あり、現在はそのうちの37校で実施しています。来年4月に8校加わって45校になりますが、ゆくゆくは65校全校で「ねりっこクラブ」を実施したいと考えています。北町地域では「北町西小学校」と2022(令和4)年4月から「北町小学校」でも「ねりっこクラブ」が運営される予定です。
コロナ禍になり「ねりっこクラブ」のひろば事業は一時的にお休みした時期もあるのですが、現在では感染症対策のガイドラインに沿って運営をしています。また、他自治体の中には、学童クラブで受け入れるこどもを医療従事者などのこどもに限るといったような対応をしたところも一部ではあったのですが、練馬区としては職種を問わず、また学童クラブの役割というのはすごく大事なことだと認識しておりますので、一貫して運営することを最優先に考えました。
現場では、マスクの着用や換気、手洗いといった基本的な感染症対策はもちろん、おもちゃの消毒なども徹底しながら、こどもたちがお団子状にならないような遊び方を工夫しているようです。
例えばボードゲームで遊ぶときに、ボードの両側に紐と滑車をつけて交互にボードを引っ張り合いながら距離を置いて遊んでいるといった話を聞きました。学童クラブや児童館にいる職員はこどもと遊ぶプロなので、こどもたちと一緒に知恵を出し合いながらどうしたら遊べるかを工夫しています。
オンラインを活用した事例では、複数の学童クラブがオンラインでつながってゲームで競い合ったという話も聞きました。例えば、けん玉というように種目を決めて、それぞれの場所で予選会をやって決勝に残ったこどもがオンラインで競い合うなど、また他のこどもも画面を見ながら応援するといったことにも取り組んだそうです。
子育て支援のICT化。全国初となるLINEで保活支援
――今後、注目すべき取り組みがありましたらお聞かせください。
柳下さん:練馬区では子育て支援においてもICT化を進めていまして、先ほどお話しした「練馬こどもカフェ」や「ぴよぴよ」をオンラインで実施していますし、利便性を高めるために昨年度から乳幼児一時預かりのインターネットによる予約も開始しました。
また今年度中に電子母子手帳アプリの導入も進めているところで、健診の記録や予防接種のスケジュール、育児に関するアドバイスなどを気軽に取得できるような仕組みを構築しています。
山根さん:いわゆる保活をLINEでできるように「保活支援サービス」を昨年から提供しています。従来は自分の希望や条件に見合う保育園がなかなか見つけられなくて、申し込みに至るまで何度も保育課の窓口に足を運んでいただく方が多かったのですが、特にコロナ禍で窓口が混雑するのも良くないことですし、そもそも赤ちゃんを連れて役所に来るというのは大変なことなので、その負担を軽減するために導入しました。
今年の10月からは新機能「保育指数シミュレーション」の提供を開始します。これも全国で初めての取り組みです。
柳下さん:練馬区独自の取り組みとして「子育てスタート応援券」というのもあります。2歳未満のお子さんがいる家庭に8枚の「子育てスタート応援券」を発行しています。
内容としては子育て支援事業の周知と普及を推進するため、乳幼児の一時預かりや育児支援ヘルパー事業、産後ヨガなど子育て支援講座等の事業にご利用いただけます。
山根さん:例えば美容院に行きたい、まとまった買い物に行きたいといったときなどは、子ども家庭支援センター内の子育てのひろば「ぴよぴよ」、ファミリーサポート事業で実施する乳幼児一時預かり事業をご利用いただけます。また、子育て中の方々の意見を取り入れて実施することになった新しいメニューもあります。
2021(令和3)年4月にオープンした「北町はるのひ児童館」もおすすめ
――「東武練馬」駅のある北町エリアの魅力やおすすめのスポットがあれば教えてください。
山根さん:「北町児童館」の職員に、おすすめのスポットを聞いたところ、児童館にも近い「電車の見える公園」を挙げてくれました。環状八号線と東武東上線の線路が交差する場所にあり、名前の通り公園から電車を眺めることができます。また春先には河津桜、4月にはソメイヨシノが咲き誇りお花見スポットとしても人気のようです。
児童館も「東武練馬」駅から歩いて10分ほどの場所にある「北町児童館」と、駅からちょっと離れた場所になりますが、今年の4月にオープンしたばかりの「北町はるのひ児童館」があります。
練馬区で一番新しい児童館でクライミングウォールもありますし、ベビーコーナーには電子レンジや電気ポットが設置されているので、調乳や離乳食を準備するのにも便利で乳幼児を連れた方がたくさんいらっしゃっているようです。ラウンジではフリーのWi-Fiも使用できます。
「北町はるのひ児童館」の1,2階は保健相談所で3階が児童館になっているので、乳幼児健診に行った後にそのまま遊んで行けるのも利点です。
切れ目のないきめ細やかな子育て支援が魅力の子育てしやすい街
――最後にこれから練馬区に移り住む方へ向けてメッセージをお願いいたします。
山根さん:練馬区が子育てしやすい街として知られているのは、自然が多くて都会へのアクセスも良い、都会すぎず田舎すぎない環境的に恵まれているところと、区としての思いを込めた子育て施策がうまく噛み合っているのかなと思います。
子育て施策は未来の練馬を担ってくれるこどもたちにとって重要で、だからこそ区としてもお金をかけてしっかりと充実させたいという思いがあります。
現在の前川区長は、東京都の職員だった頃、子育て施策や障害者施策に永年携わり、東京都独自の認証保育所制度の創設をはじめ、里親制度の創設、障害者グループホームの整備などに関わってきました。区長就任後も、本日お話させて頂いた、練馬こども園の創設、保育所待機児童ゼロの達成、ねりっこクラブ、練馬こどもカフェなど、様々な施策を実現しており、子育てに関して強い思いをお持ちです。
北町の魅力については、例えば北町には東西に長い商店街があって、例年「きたまち阿波踊り」が行われます。児童館でも「北町チルド連」として歴代のこどもたちが参加させてもらっています。こどもたちも地域の一員として溶け込んでいるのを見ると、北町の良いところだなと思います。
また「ちがや馬飾り」と言って、区の無形民俗文化財にも登録されているものがあります。地域に古くから伝わる七夕の風習で、馬をチガヤという植物で作って飾ります。こどもたちもモールで馬を作ったり地域の行事にも参加させてもらったり、地域の伝統をしっかり受け継ぎながら楽しい時間を過ごしています。
北町には北町大好きという方が多くいらっしゃって、地域を愛する方たちが多い魅力的な街だと思います。
柳下さん:練馬区の子育て施策で注目すべき点としては、乳幼児から中高生になるまで切れ目のないきめ細やかな支援体制を整えていることです。
例えば障害のある方やひとり親、多胎児の方などご家庭によってそれぞれいろんな事情をお持ちかと思いますが、それぞれのニーズや家庭の状況に応じて多様な支援をきめ細やかにアプローチできるのが練馬区の特色です。
山根さん:そうですね。保護者の方が子育てのスタイルを選べるようにしたい。子育てのありようには人それぞれ思いがあって、そのかたちはひとつではないと思います。
家庭で子育てしたい人もいればこどもを預けて働きたい人もいる。子育てはこうじゃなきゃいけないとか、練馬区にはこういうサービスがあるから使ってくださいというのではなくて、どれが良いですかと選んでいただけるようにしたい。その人が思い描く子育てのありようを実現できるようにきめ細やかな支援を今後も提供していきたいと思っています。
練馬区役所
教育委員会事務局こども家庭部 子育て支援課長 山根由美子さん
教育委員会事務局こども家庭部 こども施策企画課長 柳下(やぎした)栄さん
所在地:練馬区豊玉北6-12-1
電話番号:03-3993-1111
URL:https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/soshiki/kodomokatei/index.html
※この情報は2021(令和3)年9月時点のものです。
ニーズや家庭の事情に応じて多様なサポートをきめ細やかに提供する練馬区の子育て支援/練馬区役所(東京都)
所在地:東京都練馬区豊玉北6-12-1
電話番号:03-3993-1111
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閉庁日:土・日曜日、祝日、年末年始(12/29~1/3)
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