地域の教育力の向上を目指す 北区が掲げる教育ビジョンとは/北区役所教育政策課
北区 教育委員会事務局
教育政策課長事務取扱参事 登利谷 昭昌さん
地域の教育力の向上を目指す
北区が掲げる教育ビジョンとは
北区では、2010(平成22)年2月に「北区教育ビジョン2010」を策定し、「教育先進都市・北区」のさらなる発展を目指すため、これまでさまざまな施策に取り組んできた。2015(平成27)年には、「北区教育ビジョン2010」の課題を踏まえた「北区教育ビジョン 2015」を展開し、「北区学校ファミリー構想」や「放課後子ども総合プラン」など北区ならではの活動を計画している。今回は教育政策課に教育ビジョンや今後の展開についてお話を伺った。
まず初めに、「北区教育ビジョン 2015」の位置づけについて教えてください。
「北区役所滝野川分庁舎」
「北区教育ビジョン 2015」には、位置づけとして5つの項目があります。その中でも10年程度の将来を視野に入れた今後5年間に、北区教育委員会が重点的に取り組むべき、「学校教育分野」「生涯学習分野」「スポーツ分野」を基本的な方向性と主な施策として提示しています。
一番大切な点は、「北区が目指すべき教育の方向」だと考えています。「北区教育ビジョン2010」では、義務教育の9年間は将来を生き抜いていく力を養うために最も重要な時期であり、知識基盤社会の中で生きる力を身につけるため、基礎となる力の育成を保証していくことは、公教育の大きな使命であるとの認識から、「生涯学習社会の構築を目指しつつも、その基となる学校教育」に重点を置くこととしていました。
「生まれてから死ぬまでのすべてのところで生涯学習をしていく」そういう社会の構築を目指していくのですが、その中でも「学校教育に重点を置いていく」というのが「北区教育ビジョン2010」の目指すものでした。「北区教育ビジョン2015」では、社会全体が、核家族になり、地域との連携が薄れ、家庭の教育力が落ちてきているのではないかという課題のもと、さらなる学校教育を目指していきます。
「北区教育ビジョン 2010」では、施策展開にどのような効果や課題が見られましたか。
「北区教育ビジョン2010」については、すでに述べたように3つの視点から「取り組みの方向」を示し、数多くの事業を実施してきました。十分な成果を得られなかったものもありましたが、全体的には、計画に沿った推進が図れたものと考えています。
「放課後子ども総合プラン」サッカークラブ
課題については、北区の基礎基本の定着度調査においては、学力の面でおおむね良好な結果が出ていますが、目標値を超えている生徒と、超えていない生徒の2極分化がみられるということがあります。また、文部科学省の体力運動能力調査によると、北区の子どもは身長や体重などの体格は向上しているけれども、体力運動能力が全国を下回っています。
「放課後子ども総合プラン」水風船釣り
生涯学習では、区民はそれぞれ培ってきた知識や技能をお持ちの方が多いけれども、地域や学校で活かせる仕組みが、まだまだ十分ではありませんでした。今後は、これまでの取り組みの成果と課題を踏まえ、新たな教育委員会制度のもとで区長部局と一体となり、社会の変化に柔軟に対応しつつ、新たな取り組みや事業の再構築を図っていきます。
「北区教育ビジョン2015」では、5つの柱に基づき、その実現に向けて140 の具体的な推進計画を示されていますが、その中でも重要視している政策について教えて、いくつか教えてください。
「放課後子ども総合プラン」
特に力を入れているのが学校教育の充実です。学力向上サポートチームによる「学習支援つまづきゼロプラン」という授業も考えています。ほかにも「グローバル人材育成プロジェクト」「放課後子ども総合プラン」「学校改築リフレッシュ改修工事」があります。子どもたちが学習をしていく環境を整備していくことや、家庭教育も重点的に取り組んでいきます。
取り組みの中には、「地域の教育力の向上を支援する」とありますが、具体的にはどのような取り組みをされるのでしょうか。
主には、学校を主体としています。その中で地域の方々にも関わっていただく授業を通して、学校、地域ともに教育力を向上させていくという考え方で取り組んでいきます。
コミュニティスクールについて
具体的には、学校に学校運営協議会を設置する「コミュニティスクール」という事業を行っています。いろいろな技を持っている方に授業に入っていただいたり、一緒にお祭りみたいなものを計画していただいたりと事業内容もさまざまです。ほかにもPTAは今通っている子どもの保護者で組まれていますが、学校運営協議会は地域に住んでいるすべての方が協力者になりえますので、そういう方に入っていただいて、学校の経営力を高め、かつ、地域にも活力を与えられるように取り組んでいきたいと考えています。
「放課後子ども総合プラン」自由工作
「放課後子ども総合プラン(わくわく☆ひろば)」は、小学校を会場として、放課後等におけるすべての児童の安全・安心で健やかな活動拠点(居場所)の充実を図るため、「放課後子ども教室」「学童クラブ」「校庭開放」の機能を併せもつ総合的な放課後対策として活動しています。現在では区内の小学校10校で実施しています。
「放課後子ども総合プラン」カルタ遊び
今後は、一体型の「放課後子ども総合プラン(わくわく☆ひろば)」を2019(平成31)年までに全小学校での実施に向け、さらに多様で魅力ある体験・交流活動ができるよう充実を図ります。
ボランティアの方も教育活動に関わる
ほかにも、学校支援ボランティア活動推進事業として、子どもたちの教育活動にボランティアの力が活かせる取り組みを行っています。
ボランティアの方によるお話会
ボランティアの方には、登下校の子どもたちの安全確保や、学校のビオトープの整備などのお手伝いをしていただいたりといろんなところでお世話になっています。今後は、地域人材を相互に活用するなど連携を進め、地域の教育力向上を図ります。
北区では、通学区域の重なる小学校と中学校からつくられる近隣複数校のネットワークとして 「北区学校ファミリー構想」を提案されていますが、具体的な内容について教えてください。
この「北区学校ファミリー構想」では、中学校区内にあるいくつかの小学校と幼稚園が連携して、小中一貫教育を進めようとしています。これを「学校ファミリー」と名付けています。その一つひとつのグループをサブファミリーとして設定しています。これはほかのところにはない画期的なことだと自負しています。
ファミリー校を招いた研究協議
(北区立赤羽台西小学校)
義務教育は6年と3年に分かれていますが、9年間を通してグループ内容の系統性を図りながら、小中の教員が両方で育てていきます。小中学校の系統性のあるカリキュラムを作って、それに基づいて指導しています。カリキュラムは独自で教科ごとに作っています。サブファミリーごとに地域の特色が違うので、それを生かしながら、連携して課題を解決していこうということです。
あいさつ運動(北区立桐ケ丘中学校)
年に3回、ファミリーの日を設けており、そこで研究授業をしたり、交流行事を行っています。交流行事について、「北区立赤羽岩淵中学校」のサブファミリーでは、小中一緒の防災教育で地域の方と訓練しています。「北区立桐ケ丘中学校」のサブファミリーでは、心の教育に重点をおいています。サブファミリーの中で「あいさつをしましょう」「履き物をそろえましょう」「時間を守りましょう」と子供憲章を作っています。ポスターを作り、地域の掲示板に張るなど、地域ぐるみで心の教育をしています。
小中一貫教育を進めることで、どのような効果がありましたか?また、今後の展望についても教えてください。
「北区立桐が丘郷小学校」
2013(平成25)年で、小中一貫教育を全学校で始めて2年ほど経ちましたので、「検証委員会」を立ち上げ、取り組みの現状や効果を検証した報告書をまとめました。その中で成果としては、サブファミリーごとに連携を進めることで、中1ギャップの緩和や不安の解消、自己肯定感の向上などの成果が出ています。また、教員同士の相互理解や、一貫した中で子どもを見守っていくことで、児童生徒の理解が深まり、また小中学校のつながりを意識した授業を行うようになったと成果が出ています。
一方で小学生と中学校の先生が集まるということは、時間も場所も必要になるので、事務や役割分担が負担になっていきます。そのような課題を含めて、これから小中一貫校の設置が必要になってきます。「北区としてどのような一貫校が必要なのか」。これからも引き続き、よりよい学校教育のため、地域と連携しながら進めていきたいと思います。
今回、話を聞いた人
北区 教育委員会事務局
教育政策課長事務取扱参事 登利谷 昭昌さん
北区役所滝野川分庁舎
所在地:東京都北区滝野川2-52-10旧滝野川中学校
電話番号:03-3908-9279(教育政策課)
http://www.city.kita.tokyo.jp/k-seisaku/kuse/gaiyo/buka/kyoiku/sesaku.html
※この情報は2015(平成27)年4月時点のものです。
地域の教育力の向上を目指す 北区が掲げる教育ビジョンとは/北区役所教育政策課
所在地:東京都北区王子本町1-15-22
電話番号:03-3908-1111
開庁時間:8:30~17:00
閉庁日:土・日曜日、祝日、年末年始
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