「日本一の給食」を再現する区役所

街を活かす絶妙なまちづくりの舵取り。「足立区」の街のつくり方/足立区市街地整備室まちづくり課 長谷部泰人さん


足立区の南部に位置する千住エリア。「北千住」という地名はなく地元の人たちは「千住」と呼ぶが、ここでは近年注目が集まる、駅名の「北千住」を用いて紹介する。ターミナル駅を有する街ならではのアクセス性と、商業施設が充実していることを知っている者には、人気上昇の傾向を“何をいまさら”と感じるかもしれない。宿場町として栄えた歴史と、近現代でまとった新たな魅力を損なうことなく、まちづくりをしてきた足立区にお話を伺った。

足立区まちづくり課の長谷部さん
足立区まちづくり課の長谷部さん

――まずは、足立区の再開発について聞かせてください。

足立区:同じ足立区とは言っても、エリアごとに特徴がありますから、地域の代表者や町会長と話し合うなどし、それぞれに合ったアプローチでまちづくりを進めています。

足立区の中心とも言える「北千住」駅周辺に関して言えば、西口に「マルイ」さんの出店と、ペデストリアンデッキを含む駅前広場の開発で様子が一変しました。一方の東口は、もともとは地元の方しか歩かないようなところでしたが、「東京電機大学」の誘致に伴い、駅前広場や区画街路、駅前広場を整備したことで賑わいがもたらされました。

「北千住」駅前のペデストリアンデッキ
「北千住」駅前のペデストリアンデッキ

――近年、北千住は住みたい街としてその名が挙がるようになりました。

足立区:知られていなかったというだけの話で、以前から魅力のたくさんある街でした。「北千住」駅は、千葉・茨城と都心部をつなぐターミナル駅。アクセス性にも優れていますし、個人経営の商店や飲食店も多く、知らない者同士が親しくなりやすい雰囲気も魅力です。

飲食店などが多く、グルメな街となってきている
飲食店などが多く、グルメな街となってきている

さらに大学のキャンパスを誘致したことで、結果として約10,000人もの学生と教職員が街に来ることになりました。「東京藝術大学」「東京電機大学」「東京未来大学」「帝京科学大学」「放送大学」の5つの大学のキャンパスがありますので、人が増え、路地歩きが増えたことで街の隅々まで元気になり、“北千住で商売をしよう”という若者もどんどん増えています。それまでは電車を乗り継ぐ場所として使うだけだった方も、駅周辺を散策してくれるようになりました。こうした連鎖反応により、全てが良い方向へと進んでいますが、しかし行政がやったことは大学誘致とそれに関連する動きだけ。自然と生まれる人から人への発信力を改めて実感した次第です。

「東京電機大学」などのキャンパスが人が集まるきっかけに
「東京電機大学」などのキャンパスが人が集まるきっかけに

――宿場町として栄えた歴史も、街の魅力的な表情になっているのではないですか?

足立区:そうですね。今でも江戸時代に形づくられた「千住宿」の町割が残っていることもあり、北千住でしか味わえない路地歩き・街歩きがあります。北千住は江戸の“外”だったので、“内”よりも自由が認められていました。大店も多く、裕福な商人がパトロンとして文化人を育てたという歴史もあります。宿場という旅立ちの場所という性格から、置き土産として多くの書画が街に残されました。

当時の人々の気質は、1815(文化12)年に催された「酒合戦」によく表れています。これは、千住の飛脚問屋・中屋六衛門の還暦を祝い、“誰がより多くの酒を飲めるか”を競い合った牧歌的な戦です。それから200年後の2015(平成27)年、その再現を試みて、街の有志により「千住酒合戦」が開催され、それに関連するイベントも近隣の飲食店等で行われました。これも、まちに長い歴史があるからこその話ですね。

にぎやかな「宿場町通り」
にぎやかな「宿場町通り」

――「あだちまちづくりトラスト」について教えてください。

足立区:「あだちまちづくりトラスト」は、創意工夫による自主的なまちづくり活動を行う個人と団体を対象とした助成制度です。“学生のまちづくり活動コース”“身近なまちづくり活動コース”“まちづくりはばたき支援コース”“まちづくりイベント・整備活動コース”“街並み空間・自主管理歩道等助成コース”の5コースがあり、助成限度額と助成回数はそれぞれ異なりますので、少しでも関心のある方はWebサイトを御覧いただければと思います。

まちづくり課の長谷部さん
まちづくり課の長谷部さん

――北千住は、どのような街を目指しているのでしょうか。

足立区:民間投資のさらなる拡大により、これまで以上の活気を街にもたらしたいと考えています。千住エリアでは大手企業だけでなく、まちで生まれ育った、あるいはまちに惚れ込んだ若い世代が起業し、思いのつまった飲食店などを展開、個性豊かな店々が健闘するユニークなエリアとなっています。このような動きも大事にし、官民の協働により、街全体でまちづくりをしていければと思っています。

新旧の魅了が味わえる街、北千住
新旧の魅了が味わえる街、北千住

――最後になりますが、北千住エリアの魅力について改めて聞かせてください。

足立区:新旧の程よい調和が、北千住の魅力のひとつですね。おしゃれな外観のカフェがあるかと思えば、すぐ隣には古い木造家屋がある――。こうした変化のある街並みを楽しみながら路地を歩けば、思いがけない発見もあると思います。学生や子育て世代をはじめ、北千住を舞台に活動している団体が「あだちまちづくりトラスト」の申請をしています。こうした活発な動きがあることも、今後の北千住を楽しみなものにしてくれています。

街を活かす絶妙なまちづくりの舵取り
街を活かす絶妙なまちづくりの舵取り

足立区役所

足立区市街地整備室まちづくり課
長谷部泰人さん
所在地 :足立区中央本町1-17-1
電話番号:03-3880-5111
URL:http://www.city.adachi.tokyo.jp/
※この情報は2017(平成29)年5月時点のものです。

街を活かす絶妙なまちづくりの舵取り。「足立区」の街のつくり方/足立区市街地整備室まちづくり課 長谷部泰人さん
所在地:東京都足立区中央本町1-17-1 
電話番号:03-3880-5111
開庁時間:8:30~17:00 ※第4日曜日9:00~16:00に一部窓口を開庁
閉庁日:土・日曜日、祝日、年末年始(12/29~1/3)
https://www.city.adachi.tokyo.jp/