「ここで学べば経験と力がつく」と実感してもらえる「西東京市立中原小学校」/校長 水野慎一郎先生
教職員と保護者が同じ方向を向いて指導ができるようにと、「中原スタンダード」という日々の教育指針を明確に示している「西東京市立中原小学校」。当たり前のことを当たり前に、妥協をせずに指導を行うことで、子どもたちの経験値があがり力をつけることにもつながっているという。2019(平成30)年1月には新校舎建設に向けて動き始めるという中原小学校の水野校長先生に、日々の取り組みや地域との連携についてお伺いしました。
――小学校の沿革と概要、教育目標などを教えてください
本校は1959(昭和34)年、「保谷第一小学校」から333名の児童が転入学して開校した学校で、現在778名の児童が通っています。「よく考える子」を最重点目標とし、「思いやりのある子」「じょうぶな子」「進んで実行する子」「よく働く子」の5つの教育目標を掲げて、子どもたちの育成に日々取り組んでいます。
――特に力を入れて取り組んでいることなどはありますか?
学校の経営方針として、「中原小で学べば、これだけの経験ができる。これだけの力がつく」と、多くの人が児童の成長を実感できる学校にしたいと考えています。そのためには特別なことをするのではなく、授業を落ち着いた気持ちで受けたり、生活習慣を整えたり、当たり前のことを当たり前に行うことで経験や力を身につけることが大切です。本校では教職員が児童に対して同じ目線、同じ歩幅で指導ができるように。また保護者の方々にも明確な方向性を示せるように「中原小スタンダード」を設定し、全校で継続徹底しています。
――中原小スタンダードの内容について詳しく教えていただけますか?
学校生活の基本は授業であり、学習の基礎基本を学ぶ場です。ですから落ち着いた気持ちで授業を受けられるように、「学習用具・学習道具:学習に必要なものを必要な数だけ持ってくる。」「授業前:学習用具を机の上に出して、チャイム着席で待つ。」「授業中:背筋を伸ばして、良い姿勢で座る。椅子を前に放って椅子に深く座る」「家庭で:「家庭学習の手引き」を活用して、きちんと自分から進んで宿題や家庭学習に取り組む。」という、【学習スタンダード】を決めました。
また、授業自体もリズムを作り、授業の流れを共有することで教職員も進めやすく、子どもたちも理解しやすくなると考え、「授業のめあてを掲示します。」「主体的・対話的な学習活動を設定します。」「授業終了前に「学習の振り返り」を行います。」「いつでも学習した内容を確認できるようなノート作りを目指します。」と、【授業スタンダード】を取り決めました。
そして基本的な生活指導の指針として「あいさつ:あいさつの4つのステップ ①大きな声ではっきりと ②自分から進んで ③相手の目を見て ④時と場合に合わせて。」「くつ箱:くつの泥を落とし、かかとをそろえる。」「友達関係:自分の思いや考えを言葉で伝えるようにする(低学年)、自分の思いや考えを言葉え正しく伝える(中学年)、自分の意思や要求をしっかりと言葉で伝える(高学年)」という、【生活スタンダード】を設定しました。
こう見てみると至極当たり前のことばかりですが、これを全員が共有することで指導もブレませんし、子どもたち自身も何をどうすべきかがはっきりと分かります。70%程度できればよし、という風に妥協せず、少しでも100%に近づけるように徹底させることが大切だと考えています。
――—新校舎の建設について概要やスケジュールを教えてください
校舎は耐震補強はされているものの施設の老朽化が進んでいます。また今後も児童数の増加が予想されることから、本校と「ひばりが丘中学校」を同時期に建て替えすることになりました。現在、ひばりが丘団地内の土地に新しい中学校(第十中学校(仮称))を建設しており、2018(平成30)年度1月に「中原小学校」の児童がその校舎へ引っ越しします。そして2年間かけて今のこの場所に新しい「中原小学校」を建設し、2020(平成32)年度1月に新校舎に再び帰ってくる予定です。ちなみに「ひばりが丘中学校」は、「中原小学校」がこちらに戻ってきたら、新しい校舎(第十中学校(仮称))を新たな「ひばりが丘中学校」として使用する予定です。本校の生徒のほとんどが「ひばりが丘中学校」に進学しますので、子どもたちは引っ越しした中学校へ再び戻るような形になります。 従来のように校庭に仮設校舎を建てて新校舎を建設する場合と違い、子どもたちの安全性は確保されますし、2年間は「第十中学校(仮称)」の広い校舎と校庭で過ごすことができます。
――—新校舎建設に関して、何か構想やコンセプトはありますか?
新しい校舎に関しては、地域の方々や大学の先生なども建替協議会のメンバーに入っていただき、そのコンセプトを一緒に考えていただきました。そして「“いろどり”ある学びの丘」をテーマに、変わりゆく教育環境に柔軟に対応でき、地域に愛され、地域の核として機能する学校にしたいという考え方に一致しました。デザインや設計はまだ具体的な形にはなっていませんが、可能な限り木材などの自然素材を使用した校舎にしたいと考えています。
――—地域の方々との関わりは多いのですか?
地域の育成会に加え、本校の施設を利用して活動しているグループや地域の方々がメンバーになっている施設解放運営委員会という組織があります。通称「運協」の方々は、土日に子ども向けの教室を開いてくださったり、お祭りを企画してくださったりと、精力的に子どもたちに関わってくださっています。「中原小学校」のOBで現在、私立中学の科学の先生をしている方をお呼びして科学系の講座を開いたり、「演劇ワークショップ」「走り方教室」「料理教室」「バドミントン教室」など、その企画力・着眼力には私たちも驚くほどです。このように近隣の方々が「地域で子どもを育てよう」という意識が強く、温かな気持ちに支えられていると感じます。
――—保護者の方々や子どもたちの雰囲気はいかがでしょうか?
児童の父親たちが有志で集まった「おやじの会」が盛んで、今年は創立10年目を迎えるということで、公民館を借りて「みんなのひばり祭り」という子ども向けのお祭りも企画・運営してくださいました。学校の教育活動にも協力的で、今年の運動会ではじょうろで水撒きをしてくださったり、警備についてくださったり、細かなことまでサポートしてくれて助かりました。本来なら子どもが卒業したら「おやじの会」も卒業なのでしょうが、“レジェント”と称して残る方がいたりして…本当に仲の良い雰囲気で羨ましいくらいです。学校としても、負担をこちらに感じさせない楽しい雰囲気の活動で、本当に助かっています。
子どもたちは落ち着いた雰囲気です。規模の大きな学校なので、校庭遊びも周囲の様子を見て気を配りながら遊ぶのですが、配慮もきちんとできる様子が見られます。つくし学級との交流でも言えることですが、目端をきかせたり、周囲に配慮したりということが普通にできるやさしい子どもたちが多いと思います。
――—この地域について校長先生が感じられることはどんなことですか?
近年は再開発が進んで大型のマンションが建ち、さまざまな地区から転入してくる方が増えました。昔からこの地域に住んでいる方と新たに引っ越してきた方は、子どもを中心にして、交流しながらお互い理解を深めていると様子が見られます。そんな柔軟な姿勢が、子どもたちの落ち着いた雰囲気にもつながっているように思います。また、ひばりが丘は駅前も大型の商業施設が整備され、「池袋」駅までも最速で15分ほどと利便性も高く、非常に暮らしやすい環境ではないでしょうか。
今回、話を聞いた人
西東京市立中原小学校
校長 水野慎一郎先生
※掲載の情報は2017(平成29)年11月のものになります。
「ここで学べば経験と力がつく」と実感してもらえる「西東京市立中原小学校」/校長 水野慎一郎先生
所在地:東京都西東京市ひばりが丘2-6-25
電話番号:042-422-4518
http://www.nishitokyo.ed.jp/e-nakahara/