スペシャルインタビュー

交通利便性と里山の自然が共存
市民活動が盛んなアートのまち/川崎市麻生区役所(神奈川県)


都心へのアクセスも良く、買い物環境や自然環境にも恵まれた川崎市。その中で麻生区は、川崎市の農地と山林の半分近くを占める自然環境があり、市民による芸術・文化活動が盛んな「芸術・文化のまち」でもあります。麻生区役所を訪ね、まちづくりの取り組みや子育て支援策、麻生区の魅力について伺いました。

農と環境を活かしたまちづくりと芸術振興のサポートに注力

「麻生区役所」外観
「麻生区役所」外観

――川崎市において、麻生区はどんな特色のある街ですか?

川久保さん(企画課):麻生区は川崎市を構成する7つの行政区の一つで、市の北西部に位置しています。区の中心地となっているのは、川崎市の広域拠点として公共施設や商業施設など都市機能が集まる小田急線「新百合ヶ丘」駅周辺です。「五月台」駅から「新宿」駅までは約30分。その交通利便性と同時に、川崎市の農地と山林の43%を占める自然環境に恵まれていることが、麻生区の最大の特色です。区内の黒川、岡上、早野の農業振興地域では、キュウリやトマト、川崎産のワインに使うブドウなどを作っています。黒川には、川崎市に2つしかない「セレサモス」という大型の農産物直売所もあります。

「セレサモス 麻生店」
「セレサモス 麻生店」

また、麻生区には昭和音楽大学、玉川大学、田園調布学園大学、日本映画大学、明治大学、和光大学と6つの大学があります。ひとつの区内にこれほど多くの大学が集中しているのはあまり他では見られない環境であり、この環境が影響しているのか、学術、特に芸術・文化分野の活動が盛んです。

新谷さん(地域振興課):麻生区には多くの芸術・文化団体があり、「新百合ヶ丘」駅周辺には「川崎市アートセンター」など関連施設が集積しています。そして黒川には「劇団民藝」の稽古場、「読売日本交響楽団」の練習場、「日本オペラ振興会」のリハーサルスタジオがあります。設備が充実しているだけでなく、「KAWASAKIしんゆり映画祭」など市民主体で開催されるイベントが多いのも麻生区の特徴です。

――麻生区の今後のまちづくりの取り組みについて教えてください。

佐藤さん(企画課):豊かな農地や自然を活かし、農と環境を活かしたまちづくりに力を入れています。黒川では明治大学等と連携してキャンパス内の圃場で収穫体験を行っていて、多くの親子連れが参加しています。里山に美術品を設置して里山を歩きながらアート鑑賞を楽しむイベント「緑と道の美術展」も黒川で行われています。主催は緑地を管理している団体や実行委員会など地域の方々で、区はバックアップする形で関わっています。

2024(令和6)年に市制100周年を迎える川崎市は、「全国都市緑化かわさきフェア」の開催を予定していますし、麻生区としても、緑を活かしたイベントについては今後もサポートに注力していく予定です。

企画課 担当係長 佐藤さん
企画課 担当係長 佐藤さん

鈴木さん(地域振興課):芸術・文化振興についても、引き続き推進していきます。コンサートや上映会等も行政主導ではなく、市民の発意を受けて協働で実施しています。麻生区には、市民主体の芸術・文化活動が根付いています。例えば音楽活動を行っている団体や区民で作り上げる「麻生音楽祭」は37 年の歴史がありますし、区役所のロビーから始まった「あさお芸術のまちコンサート」は今年で22 年目を迎えました。

私たちは市民グループの交流を促しつつ、常にアンテナを張り、コラボレーションが生まれる可能性があればいち早くキャッチして支援ができるよう努めています。みなさんとの化学反応でイベントが生まれていくようなイメージですね。また、新しいものとしては麻生区で活動する芸術・文化団体のステージやワークショップ、展示を楽しめる「カフェ・グランデ あさお」という交流イベントも行っています。

新谷さん:最近では演劇と音楽のコラボレーションなど、新たな交流も生まれています。今後も地域の力で良質な芸術・文化をつくり育て、市民が楽しめるようサポートしていきたいです。

佐藤さん:ハード面では、地下鉄の延伸が予定されています。現在「あざみ野」駅まで来ている横浜市営地下鉄ブルーラインが、「新百合ヶ丘」駅まで延伸する予定で、交通政策審議会答申の目標年次である2030(令和12)年の開業に向け取組を進めています。まだ少し先ですが、東海道新幹線が停車する「新横浜」駅など、横浜へのアクセスが向上するでしょう。

子育て支援事業として、大学と連携したイベントを通年実施

――麻生区エリアの子育て支援の取り組みについて教えてください。

平野さん(地域支援課):地域支援課としては、不安なく出産や子育てに臨んでいただけるよう妊娠期から子育てまで切れ目のない支援を目標に、取り組んでいます。初産の妊婦さんとそのパートナーを対象に「両親学級」を開き、妊娠中の生活や出産、育児についての講話や実習を行っています。現在は育児に関心の高い父親の方が増え、お二人そろって参加されるご夫婦が多いです。

地域支援課 保健師 平野さん
地域支援課 保健師 平野さん

麻生区では、12人の地区担当保健師等の専門職や地域に住む赤ちゃん訪問員が受け持ち地区をまわり、生後間もない赤ちゃんのいるご家庭をすべて訪問しています。母子の健康状態を確認し、育児相談に乗るほか、状況に合わせて産後ケアや産後ヘルパーの利用について支援をして派遣などを行います。出産後、育休を取るお父さんも非常に増えたと感じます。また、川崎市で無料の子育てアプリ「かわさき子育てアプリ」を用意しており、母子健康手帳交付時に紹介しています。予防接種のスケジュール管理を簡単に組むことができ、子どもの健診時期や必要な手続き等の情報が通知されるので便利ですよ。

「かわさき子育てアプリ」イメージ画像
「かわさき子育てアプリ」イメージ画像

上原さん(地域ケア推進課):地域ケア推進課では、子育て支援事業として区内の大学と連携したイベントを通年で実施しています。
昭和音楽大学ならコンサート、日本映画大学なら映画の制作体験というように、各大学の専門性を活かした内容です。また、和光大学では「鶴見川」での川の生きもの採取と観察、明治大学では収穫体験など、立地を活かした自然とふれあう体験学習を実施しています。対象もそれぞれ異なり、玉川大学では保護者向けに赤ちゃん学の講座を開き、田園調布大学では子ども向けに創作活動のイベントなどを行っています。
事業の内容は、区からご相談させていただく他、大学側からご提案いただいて実現するものもあります。

――麻生区エリアの子育て環境について教えてください。

草野さん(地域支援課):麻生区の子育て世帯には、元々この地域に住んでいた人より、結婚を機に引っ越してきた人が多い印象です。近くに祖父母や父母など頼れる人がおらず、全く知らない土地で子育てをする場合、孤立しない環境が重要ですよね。麻生区には地域の人との交流の場が多く用意されています。

高橋さん(地域みまもり支援センター保育所等・地域連携):「五月台」駅から近いところですと、片平で、週3回「地域子育て支援センターかたひら」を開設しています。はるひ野には保育所に併設されている地域子育て支援センターもあります。区内には8カ所の地域子育 て支援センターがあるので、地域や育児のことなど気軽に相談できますよ。栗平や柿生でも民生委員による「子育てサロン」が開かれていて、親同士の交流や情報交換の場となっています。麻生区役所柿生分庁舎で開かれる「あさおオモチャとしょかん」も、保護者の交流の場として役立っています。

麻生区では民間の保育園が地域子育て支援を頑張ってくださっていて、地域の人のために園庭開放や育児相談などを行っているところが多くあります。みなさん、こういった場所や機会を上手に利用されています。また、「栗平」駅の近くには病児保育施設もあるので、保育所等に入所しているお子さんが病気や、病気の直りかけで、まだ通常の保育所等では預かってもらえない時に一時的に預かってもらえます。お子さんがいるご家庭も子育てと就労の両立を図れると思います。

子育て世帯が必要とする情報をまとめた冊子類
子育て世帯が必要とする情報をまとめた冊子類

――麻生区子育てガイドブック『きゅっとハグあさお』についてご紹介ください。

上原さん:町会連合会やPTA協議会、小学校や幼稚園など、麻生区の幅広い団体から構成される「麻生区子ども関連ネットワーク会議」から生まれた冊子です。2011(平成23)年から年に一度発行していて、妊娠・出産から子育てまで、子育て支援に関する幅広い情報を掲載しています。育児に関するさまざまな制度やサポート情報、各種手当の申請窓口に相談窓口に加え、医療機関の情報、子どもの遊び場なども紹介しています。

母子健康手帳をお渡しするときに配布するほか、区役所の2階ロビーにある情報コーナー、地域子育て支援センター、こども文化センターなどの子育て関連施設などにも置いてあります。これとは別に、麻生区内の保育所等の子育て支援情報をまとめたチラシ『はばたけあさおっこ』も発行されています。

新宿まで30分、豊かな緑、活発な市民活動・・・尽きない麻生区の魅力

――麻生区の魅力をお聞かせください。

川久保さん:やはり、30分で新宿まで出られる利便性と里山の自然が共存しているところでしょう。大きな直売所での買い物や収穫体験を近所で楽しめるのは、麻生区ならではの魅力です。

佐藤さん:里山の風景が残る区北部の黒川地区は、本当に川崎市なのかと思うほど緑に恵まれた景色が広がっています。農地だけでなく特別緑地保全地区も多く、多様な生物が生息しています。公園の数も多く、一人当たりの公園面積は川崎市7区の中で最大です。また、月に一度「新百合ヶ丘」駅南口で行っている「しんゆりフェスティバル・マルシェ」は、関東および沿線最大級の規模で、子どもも大人も一日中楽しめます。

市民活動についての情報も多い
市民活動についての情報も多い

鈴木さん:市民による市民活動の支援が確立していることです。「新百合ヶ丘」駅の近くに、会議室、音響機材、プロジェクターなどを備えた「麻生市民交流館やまゆり」という市民活動の拠点となる施設があります。運営しているのは認定NPO法人で、行政と市民をつなぐ中間支援組織として素晴らしい活動をしています。やまゆりの存在が、市民活動の活性化に非常に役立っていると思います。

新谷さん:冬には「kirara@アートしんゆり」といって、南口の中央広場にツリーが設置されるなど、「新百合ヶ丘」駅周辺のイルミネーションがきれいです。それと、片平にはプロサッカーチーム「川崎フロンターレ」の練習場があり、コロナ禍による制限はあるものの練習風景を見学することもできますよ。

川崎市麻生区役所

企画課 佐藤さん、川久保さん
地域ケア推進課 上原さん
地域振興課 鈴木さん、新谷さん
地域支援課 保健師 草野さん、平野さん
地域みまもり支援センター保育所等・地域連携 高橋さん
所在地 :川崎市麻生区万福寺1-5-1
電話番号:044-965-5112
URL:https://www.city.kawasaki.jp/asao/index.html
※この情報は2022(令和4)年9月時点のものです。

交通利便性と里山の自然が共存
市民活動が盛んなアートのまち/川崎市麻生区役所(神奈川県)

所在地:神奈川県川崎市麻生区