緑と歴史に抱かれた大規模複合開発
“紀尾井町ならでは”の街づくりとは/株式会社西武プロパティーズ
都市開発部 アシスタントマネジャー 猪鼻茂樹さん
株式会社西武プロパティーズ
都市開発部 アシスタントマネジャー 猪鼻茂樹さん
緑と歴史に抱かれた大規模複合開発
“紀尾井町ならでは”の街づくりとは
(2013/07/26取材)
2011(平成23)年に閉館し、その後は東日本大震災の被災者を受け入れ、最後の役割を終えた「グランドプリンスホテル赤坂」。バブル期に人々の憧れの的となっていたこのホテルは、惜しまれつつも解体され、2013(平成25)年7月、その工事を終えた。
この跡地に計画されているのが、総工費980億円をかけ、2016(平成28)年の開業を目指すビッグプロジェクト「(仮称)紀尾井町計画」である。敷地面積30,400平米、延床面積227,200平米におよぶこの計画では、旧グランドプリンスホテル赤坂の敷地一帯を整備し、36階建てのオフィス・ホテル棟と、24階建ての住宅棟の2棟のビルを中心に整備される。今回は本プロジェクトを推進している(株)西武プロパティーズの現地事務所にお邪魔し、開発担当の猪鼻茂樹さんにお話をうかがった。
「紀尾井町ならではの歴史的環境を感じられる施設計画」を目指すとのことですが、具体的にはどのようなものでしょうか。
今回の計画地の周辺は、南側に「赤坂御門(ごもん)」の跡や「弁慶濠(べんけいぼり)」、北側に「清水谷(しみずだに)公園」など、歴史性を有する環境になっており、その「弁慶濠」と「清水谷公園」という緑の豊富な場所との“緑の連続性”を生むような計画をしています。
また、グランドプリンスホテル赤坂(旧称:赤坂プリンスホテル)時代に、旧館と呼ばれていた建物は、1930(昭和5)年に竣工し、すでに80年以上を経た歴史的建造物なのですが、2011(平成23)年に東京都の「指定有形文化財」に指定されました。今回、保存・改修を行い、紀尾井町計画のシンボルとなるよう、計画を進めております。利用方法の詳細については、現在検討中です。
この旧館を保存するにあたっては、一度建物をジャッキで持ち上げて移動し、その間に地下構造物の工事を行い、また元の位置に戻すという、「曳家工法」を実施する予定になっています。これによって、若干の位置の変更はありますが、この土地に根づいた景観を損ねず、保存、改修を行うことができます。
また、緑に関しましても、もともとあった樹木をできるだけ保存するような計画で進めておりまして、実際に工事現場に行かれると分かりますが、大きな木が工事現場に何本も残っています。このように、歴史的樹木の保存という面も配慮しています。
今回の計画の、一番の「売り」は何でしょうか。
利便性の高い都心立地で行われる、大規模な複合開発でありながらラグジュアリー感のある新しいホテルを中心に、歴史的な環境、豊かな緑地空間などが生まれる、「ホスピタリティあふれた良質で独自性の高い街づくり」であるという点が、一番の売りになるかと思います。
また、オフィス・ホテル棟は地上36階、高さ180mで、高級感と存在感を併せ持った施設になると思います。住宅棟につきましても、賃貸物件としては都内でもトップクラスの建物になる予定です。
今回、ホテルは「ラグジュアリー感」を大事にされるようですが、具体的にはどのようなホテルになるのでしょうか。
ホテルには30階以上の上層階で、各フロアから都心の景色を堪能していただけるよう検討しています。また、250室程度の客室を計画しております。オールデーダイニング、スペシャリティレストラン、バーラウンジ、スパ、プールなどを備えて、ラグジュアリー感を出していければと考えています。
ホテルのランクに関しては検討中ですが、「グランドプリンスホテル赤坂」の跡地に建設いたしますし、お客さまが求めている期待感というものもありますので、それにお応えできるようなホテルにしたいと考えています。
どのような層の方に利用して頂くイメージでしょうか。
今回の計画では、「弁慶濠」や「グランドプリンスホテル赤坂旧館」などに代表される歴史的環境がある場所で、豊かな緑地空間を配した、良質で独自性の高い街づくりが計画されています。もともと交通利便性の高い場所でもあり、今回は地下にバス乗り場、タクシー乗り場などの新たなインフラも整備されますので、国内外を問わず幅広い年齢層の方、さまざまな目的をもった方に広くお越しいただけるような場所にしたいと考えています。
一日の利用者想定はどれくらいでしょうか。
こちらについては、現在、入居するテナント等も含め検討中です。今回の計画では、オフィス、ホテル、商業施設があり、また住宅等もありますので、施設内だけを見てもかなりの利用者になると思われます。また、外部からの来街者もありますので、相当数の方が利用されるのではないか、と考えています。
今回の計画で、意識している他の施設や都市開発例などはありますか。
紀尾井町という地域がほかに類の無い地域ですので、意識している施設というよりは、今回の計画により、計画地周辺と一体となって、紀尾井町の雰囲気づくりに貢献し、地域の活性化を図っていければ良いと考えております。「紀尾井町ならではの雰囲気」を生かして、計画を進めてまいります。
この施設を、周辺にお住まいの方にどのように利用してもらいたいとお考えですか。
この計画の中では広い面積で緑地空間の整備を考えておりまして、「緑」、「花」、「水」があふれる、快適なオープンスペースとなることを目指しています。周辺にお住まいの方にも、四季の変化や、土地の歴史というものを感じていただける空間として、気軽にご利用いただきたいと考えています。このオープンスペースでは、魅力あるイベントを開催するなど、休日でも賑わいのある施設にしていきたいと考えています。
また、計画地周辺は紀尾井町通りとプリンス通りで高低差がある地形ですが、今回の計画でバリアフリーな歩行者通路等を整備しますので、そういった面でも、近隣にお住まいの方の利便性向上にもつながると思います。
低層階には商業施設が入るということですが、既に入居が決まっているテナントなどはあるのでしょうか。また、スーパー等の身近な店舗も入る予定でしょうか。
ある程度広い範囲からご来場いただけるような魅力あるテナントさんを誘致したいと考えており、土日も、幅広くご利用いただけるような商業施設を目指してまいります。
具体的には、飲食店やカフェなどを中心に誘致し、その中に、食品のスーパーマーケットやATMコーナーなど、利便施設も整備していきたいと考えております。また「飲食店」と言いましてもいろんなジャンルがあります。近隣に住まわれている方、オフィスにお勤めの方、ホテルにご宿泊の方、外からお越しになる方などさまざまですので、そういった“さまざまな需要”を満たせるような構成にしてまいりたいと思います。
今回の施設では、周辺にお住まいの方や、働く方が安心できるような防災対策をされているようですが、具体的にはどのような対策をされているのでしょうか。
構造的には、オフィス・ホテル棟が制振構造、住宅棟が免振構造という方式を採用して高い耐震性能を確保することを計画しています。また、災害時にもビルとしての一定の機能を保持できるよう、72時間の運転を確保する非常用発電機、非常食と飲料水の備蓄スペースなどを備えており、マンホールトイレの設置、施設内の一部トイレも、災害時にも使えるようにしています。また既存の井戸水を利用して、非常用の水源も確保する計画です。
これによって、計画地周辺の帰宅困難者に関しても、オフィスエントランスホールなどを利用して、約2000人程度の受け入れが可能な計画になっています。今回、この帰宅困難者の受け入れに関しては、昨年、千代田区と協定を締結させていただき、施設内外の方々に、安心・安全をご提供できればと考えています。
最後に、紀尾井町エリアの魅力についてお聞かせください。
紀尾井町という地名が、この地にかつてあった、紀州徳川家の中屋敷(今回の計画地及び「清水谷公園」付近)、尾張徳川家の中屋敷(上智大学付近)、井伊家の中屋敷(ニューオータニ付近)という各家の頭文字をとったものですので、歴史的にも由緒あるエリアであるということが、大きな魅力のひとつだと思います。
また、周辺にはホテルが多く静かな場所ですし、上智、城西といった大学等の文教施設もあり、また緑も沢山残されている、都心の中でも非常に落ち着いた、環境の良いエリアだと思います。永田町方面は官公庁街、番町方面には各国の大使館など、行政機能も集約しているエリアで、様々な顔を持った街だと思います。
今回、話を聞いた人
株式会社西武プロパティーズ
都市開発部 アシスタントマネジャー 猪鼻茂樹さん
(仮称)紀尾井町計画
URL:http://www.seibupros.jp/about/develop/kioicho/
※記事内容は2013(平成25)年8月時点の情報です。