世田谷区立山野小学校 校長 大字弘一郎先生インタビュー

世田谷区立山野小学校 校長 大字弘一郎先生


小田急小田原線「祖師ヶ谷大蔵」駅南口を出て、線路沿いを環八通りに向かって歩くこと数分。線路の南側に広大な敷地を持っている小学校が、世田谷区内でも屈指の大規模校である「世田谷区立山野小学校」だ。
この学校は環八通りから「祖師ヶ谷大蔵」駅周辺までの閑静な邸宅地を学区に持ち、創立はおよそ半世紀前の1963(昭和38)年。現在は老朽化した校舎の建て替えプロジェクトの真っ最中で、2016(平成28)年夏の着工、2018(平成30)年の竣工を目指して事業が進んでいる。
今回はこちらの校長先生を務められている大字弘一郎校長先生を訪ね、学校の特徴や新しい校舎のこと、地域の魅力などについて、幅広くお話を伺った。

世田谷区内屈指の大規模校

世田谷区立山野小学校
世田谷区立山野小学校

―― まず始めに「世田谷区立山野小学校」の概要、沿革について教えてください。

大字校長先生:本校は1963(昭和38)年の開校ですので、2016(平成28)年で52年目を迎えました。住宅地として開発されていく中で、世田谷通り近くの「世田谷区立砧小学校」から分かれて新しく本校を開校したと聞いています。およそ140年の歴史をもつ「世田谷区立砧小学校」に比べるとまだまだ、新しい学校ですね。

児童数は現在、923名が在籍しています。これは世田谷の小学校では3番目の規模で、児童数はここ数年、だいたい900名前後で推移しています。1学年が4から5クラスという規模です。また、現在新しい校舎の工事に入ろうという段階でして、2016(平成28)年4月からは一部仮校舎でのスタートになります。新しい校舎は2018(平成30)年4月に完成する予定です。

―― 学校目標や教育目標、その実現のための具体的な取り組みについて教えてください。

大字校長先生:教育目標としては、「やわらかく、まんまるく、のびやかに」ということで掲げています。「や・ま・の」ですね。これがそのまま「知・徳・体」に結びつく形になっています。これは、私が就任する前から続いている、本校の伝統的な目標です。

大字校長先生
大字校長先生

本校が一番大切にしていること、それは「授業」です。児童には「とにかく授業をしっかりやろうね」ということをいつも伝えていますし、先生方についても、一方的に教えるような授業ではなく、子どもたちがお互いに学び合うような場面をたくさん設けよう、と「授業の質の向上」を心がけています。

もうひとつは「行事」ですね。本校には「3大フェスタ」という、非常に特徴的な3つの「フェスタ」があります。「スポーツフェスタ」「山野フェスタ」「ミュージックフェスタ」と呼んでいて、毎年、運動会、学芸会・展覧会、音楽会を開催しています。

これらの行事についても非常に熱心に取り組んでいまして、子どもたちも意欲的に参加しています。見に来られる保護者や地域の方々からも、とても評判がいいですね。『授業が「知」ならば、行事は「徳」を育てる』ことに重点を置きながら、授業も行事も楽しく取り組んでいます。

「体」ということだと、もちろん体育の授業や「スポーツフェスタ」もそのひとつですし、「食育朝会」という朝会を開催しているほど、「食育」に対して力を入れているのも特徴的かと思います。ほかにも、持久走や縄跳びなども熱心に行っており、知・徳・体をバランス良く育てることができるよう、一丸となって取り組んでいます。

子どもたちの背中を見て、学びを得る

子どもたちによる作品
子どもたちによる作品

――「3大フェスタ」は、子どもたちだけでなく、地域の方々や先生方も楽しみにされている行事なんですね。

大字校長先生:「スポーツフェスタ」は、1学期に開催していて、いわば運動会のようなものです。ただ、普通の学校の運動会には「演技」の種目があると思いますが、本校ではそのような種目は一切ありません。「競技」だけに特化しているんです。「時には思い切り競い合わせる場面も必要」という考えで「競技」のみに絞っています。

「競技」だけでなく、応援もまた、とても迫力のあるもので毎年圧倒されますね。競技は4色対抗で競い合いますが、それぞれが工夫を凝らした応援合戦を繰り広げています。競技で「優勝」があるように、応援でも「応援大賞」をとるために、子どもたちは頑張っています。

元気に運動する子どもたち
元気に運動する子どもたち

「山野フェスタ」というのは、2学期に開催しており、イメージとしては高校の文化祭に近いものです。小学校の学芸会というと、学年で1本の劇を発表するイメージだと思いますが、本校の場合は、3、4年生以上になると、1学年1演目ではなく、クラスと同じ数の演目を発表しますし、5、6年生になると、さらに学年全体を分解して、有志を集い、いろいろな演目をステージで発表します。

これは子どもの希望に応じて演目数を増やしていくので、5、6年生だけでも全部で数十の演目数になります。お笑いがあったり、バンドがあったり、演武があったり、まさに高校の文化祭ですね。本当にいろいろあるのですが、子どもたちが自分たちがやりたいものを、一生懸命に取り組むので、練習を見ていても日を追って上手になっていきます。そのような姿は、私たち教員も感銘を受けていますね。

「ミュージックフェスタ」は3学期に開催している音楽会で、これは5、6年生が中心に行っています。クラスごとに楽曲を選び、クラス全員で合奏をするのですが、3、4年生はその聞き役として、5、6年生に混じって参加します。これは3つのフェスタの中では一番新しいもので、5、6年前から始まったものです。今後も続けて、伝統行事にしていきたいですね。

地域に愛されているからこそ叶う、地域連携行事

子ども達の作品で飾られた登校口
子ども達の作品で飾られた登校口

―― 学校行事や地域行事、普段の授業の中でも、地域の方々との交流、連携を大切にしていらっっしゃるそうですが、どのような行事や交流があるのでしょうか?

大字校長先生:一番にご紹介したいのが、「山野てっぺんまつり」という地域のお祭りです。このお祭りは、本校を会場として開催されているお祭りです。地域の方に学校に集まっていただき、お店を出したり、地域サークル等の発表会を行ったりと、まさに「地域のお祭り」です。

2015(平成27)年は、「山野おやじネット」でバンドの演奏をしたり、PTAコーラスの発表があったり、町会の方々が、わた菓子のお店を出してくれたり、教員は焼きそばを焼いたり、と色とりどりの出し物が揃います。もちろん、子どもたちもたくさん参加しており、2015(平成27)年は、地域の方々も含めて、およそ2,200人の来場者がありました。

委員会活動の掲示
委員会活動の掲示

これ以外の地域行事についても、子どもたちは多く参加しています。その背景には、やはり本校が地域の方々に、とても愛されている学校で、普段から密接な関係を持っている、ということがあると思います。この地域ありきの本校ですね。

「地域の方が学校に来て下さる」という形だと、1ヵ月に1度、土曜日に開催している「てっぺん教室」が代表的なものです。また、1年生が入学してきた当初に、給食のお手伝いに来ていただいたり、月曜日の朝には町会の方が、10のつく日には保護者の方が通学路に立ち子どもたちの投稿を見守って下さったり、さらに、日常的に「わんわんパトロール」が行われていたりと、いろいろな方がいろいろな形で子どもたちを見守ってくださっています。

逆に、子どもが地域の行事に参加するということについては、地域のお祭りで子どもたちが「山野太鼓」を披露したり、合唱団が地域の行事に参加して合唱を披露したり、というものが代表的なところでしょうか。

―― お話に出てきた「てっぺん教室」とは何でしょうか?

大字校長先生:これは、およそ1ヵ月に1度、土曜日に開催している自由参加の講座で、地域の方に講師に入っていただき、普段の授業では経験できないことに取り組んでいます。例えば将棋、折り紙、スポーツ鬼ごっこ、墨絵、英語、かるた、ダンス、ヨガ、体操など。本当にいろいろありますよ。夏休みなどは教員も講師として講座を開きます。私は体育が専門なので、ミニバスケットや卓球の講師をやっています。

地域運営学校の取り組みが生み出した成果

授業風景
授業風景

―― 世田谷区では地域が学校の運営をサポートする「地域運営学校」という取り組みが進められていますが、「世田谷区立山野小学校」ではどのような実践がされていますか?

大字校長先生:世田谷区はすべての小中学校が「地域運営学校」となっていますが、本校はもともと、地域との連携がとても濃い学校で、区の中でも地域連携活動が充実している学校のひとつかな、と思っています。

先ほどの「てっぺんまつり」や「てっぺん教室」をはじめ、学校に泊まる体験をする「山野キャンプ」や、授業に地域の方が入ってくださる「ふれあい寺子屋」など、これらすべてを地域の協力のもとで行っています。これほど充実した活動をしている学校は、区内でもそれほど多くないと思います。

こういった連携活動を仕切る「地域運営委員会」については、毎月1回のペースで開いており、さらに年3回、その裾野をさらに広げた「学校協議会」という、地域の26の団体が参加する委員会も開いています。そういう場面で、企画中のプロジェクトのお願いを呼びかけたり、お互いの情報共有をしながら、活動を進めています。

現校舎と仮校舎
現校舎と仮校舎

――「地域運営学校」になって6年になりますが、どのような変化を感じていますか?

大字校長先生:私は着任1年目なので、そこまで詳しくお話できませんが、長く務めている副校長に聞いてみたところ、連携プロジェクトがとても充実してきたこと、また地域の方々の間に「学校に負担をかけないようにしよう」という意識が年々強まってきている、ということを話していました。

地域の方が「先生たちは先生たちの仕事を頑張ってほしい」と、できるだけ自分たちの手で、いろいろなことを進めていこうとしてくださっているんですね。学校としては非常に助かっていますし、本当に素晴らしい地域の方々に恵まれていると日々感じています。

先日、現在の6年生に学力調査を行ったところ、「学校が楽しい」と答えた子どもが、何と96.6%もいました。これはすごいことですよ。地域と学校が一体になって活動してきた成果が、このような形で表れ、教員一同大変嬉しく思っています。今後も、お互い支え合いながら取り組んでいきたいと思います。

卒業しても、大人になっても、一生続くような教育を

真剣に授業を受ける子どもたち
真剣に授業を受ける子どもたち

―― 日頃、先生方が大事にしていることは何でしょうか?

大字校長先生:私から教職員にお願いしているのは、「できるだけその子をありのままに受け止めようね」ということです。それが子どもたちを育てるうえで、第一段階だと思っています。ありのままに受け止めれば、その子の良さも見えてきますし、その子も「大切にされている」と思うので、とても自己肯定感が高まります。なので、それをまず第一に考え、取り組んでいますね。

もうひとつは、6年間だけの関係ではない、「卒業しても、大人になっても、一生続くような教育をしよう」ということも伝えています。表現には例えを使っていますが、そういう気概を持って、本気で子どもと向き合おう、ということが根底にあります。

まずは子どもに寄り添って、その子のいいところを見つけて、肯定的に言葉がけをする。そして、悪いところを見つけて怒るのではなく、いいところを見つけて褒めてあげる。そこが一番大事にしているところです。

「山野の教育活動を生かせる」新校舎を目指す

現校舎の模型
現校舎の模型

―― 新校舎はいつごろ、どんな校舎が完成するのでしょうか?

大字校長先生:いま(平成28年1月)、ちょうど校庭に仮設校舎が建ったところですが、4月にこの仮設校舎に引っ越しをして、引っ越しが終わると校舎の取り壊しが始まります。その後は、2016(平成28)年の夏以降に新校舎の建築が、2018(平成30)年の4月に新校舎での授業が始まる予定です。

新校舎の一番のポリシーは、「山野の教育活動を生かせる」ということを考えています。たとえば、「3大フェスタ」が充実するような校舎という意味では、新たに「小ホール」という場所をつくって、いろいろな発表の場として活用できるようにし、体育館も校舎の2階に建設し、どの教室からもアクセスしやすい造りになります。当然収容人数も増えますので、行事はもちろん、全校集会や式典などでも、余裕ができてくると思います。

子どもたちのポーズが描かれた廊下
子どもたちのポーズが描かれた廊下

全体像としては、旧校舎は「コの字型」の3階建てだったのですが、新しい校舎はL字型の4階建て校舎になります。今よりも、もっと広くなりますし、校庭も今までよりも広く取れるようになります。教室数も26から34に8クラス分増えますので、今後の人口増にも十分に対応できるはずです。

ほかには、プールが屋上に移ってより安全なものになりますし、屋上の広場も旧校舎のものよりも広いスペースが取られて、鬼ごっこをしたり、縄跳びをしたり、集会をしたりと、いろんなことに使ってもらえるかと思います。

―― 今の校舎の取り壊しが迫っていますが、思い出づくりの活動もいろいろとされているようですね。

大字校長先生:そうですね。学校運営委員会の方が中心になってくださって、本校の代表委員会と一緒に、「思い出プロジェクト」というものを進めているところです。これは、子どもたち全員が、自分のいろんなポーズの人型を、いろんなところに書いて、それを残していこうというプロジェクトです。一人ひとりの姿を校舎に残して、その様子を写真に撮って、アルバム作りをしています。

思い思いのポーズを残す子どもたち
思い思いのポーズを残す子どもたち

3月には校舎のお別れ会も開催する予定でして、この時には歴代の校長先生にも来てもらったり、各学年の代表にお別れの言葉を発表してもらったり、思い出プロジェクトのスライドショーを流したり、代表委員会を中心に、いろいろ企画を練っているようです。引っ越しが終わった4月の最初の週末あたりには、地域の方々や卒業生に来ていただく機会も持とうと企画しています。

地域行事も盛りだくさん!子育てにピッタリの砧エリア

砧公園
砧公園

―― 砧エリアの魅力についてお聞かせください!

大字校長先生:この辺りは公園や運動場など、とても広い場所が多く、緑も多いのが印象的ですね。そういった面は特に素晴らしいと感じています。 それから、暮らす方々も落ち着いた、穏やかな雰囲気の方が多いと思います。子どもも穏やかな子が多いですね。それでいて、地域行事が非常に多いという点も魅力ではないでしょうか。特に子育てをする年代の方々にとっては、とても良い環境が整った地域だと思います。

―― 最後に、校長先生の個人的なお気に入りスポットがあれば教えてください!

大字校長先生:「砧公園」や「大蔵運動場」はもちろんですが、私自身、昔ウルトラマンの大ファンだったので、祖師谷大蔵の「ウルトラマン商店街」を推したいですね。今でも行くとワクワクします。活気もあって素晴らしい商店街だと思います。

ウルトラマン商店街
ウルトラマン商店街

 

世田谷区立山野小学校

世田谷区立山野小学校 校長 大字弘一郎先生
所在地 : 東京都世田谷区砧6-7-1
TEL : 03-3417-3322
URL:http://school.setagaya.ed.jp/yano/
ブログ:http://school.setagaya.ed.jp/weblog/index.php?id=yano
※この情報は2016(平成28)年2月時点のものです。

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