“世界都市”としての都心臨海部を形成するため、中長期を見据えた計画として2015(平成27)年に策定された事業計画『横浜市都心臨海部再生マスタープラン』。従来の横浜都心である「横浜駅周辺地区」を中心に、業務・商業機能が集積する「みなとみらい21地区」、開港以来の歴史が残る「関内・関外地区」の3地区に、「山下ふ頭周辺地区」と「東神奈川臨海部周辺地区」を加えた都心臨海部5地区がその対象となり、各地区をつなぎ合わせる「みなと交流軸」を形成し、目標年次である2050年(第一段階は2025年)に向け、都心臨海部5地区をさらに発展させて横浜の魅力をさらに高めようというまちづくりの方針だ。
「東神奈川臨海部周辺地区」は、ウォーターフロントの新たな市街地として整備が進む関内・みなとみらい21地区などの横浜都心臨海部と京浜臨海部とを結節するJR「東神奈川」駅周辺から臨海部にわたる約170ヘクタールを指す。
近年の社会・経済状況の課題に対応し大都市のリノベーションを推進するため、1999(平成11)年に建設大臣(現・国土交通大臣)が、横浜市から川崎市へかけての海沿いに広がる「京浜臨海部地域」を「都市・居住環境整備重点地域」として指定。 2001(平成13)年には、国土交通省、横浜市、川崎市の三団体により、都市的諸機能の導入と市民生活と産業活動の調和、水と緑の環境を創出、防災性の向上、· 横浜都心・川崎都心・東京都心・空港・他の業務核都市等との連絡を強化する広域交通網の整備などを含む「京浜臨海部地域 都市・居住環境整備基本計画」が策定された。
これを受け、2002(平成14)年に横浜市が「東神奈川臨海部周辺地区」を京浜臨海部地域の再生を先導する地区として指定。2004(平成16)年には、街のグランドデザインや、「① 大都市リノベーションの推進」「② 生活利便性と防災性の向上」「③ 水や緑と親しめるまちづくりの推進」を再編整備の基本目標として掲げた「東神奈川臨海部周辺地区 再編整備計画」を策定した。
さらに、2015(平成27)年に策定された『横浜市都心臨海部再生マスタープラン』では、同地区が横浜都心の一つに位置付けられ、主に研究・教育、医療、健康、居住などの機能を強化したまちづくりのイメージが示された。
こうした方針に沿い、これまでに「東神奈川駅周辺地区」を中心とした都市基盤整備の実施や、「東高島駅北地区」の土地の高度利用をめざす区画整理事業の準備などが進められてきた。
▼出典:「2015年2月 横浜市都心臨海部再生マスタープラン概要版パンフレット」
■「東神奈川駅周辺地区」について
JR「東神奈川」駅と京急「仲木戸」駅があり、臨海部の産業地域と内陸部が接する重要な地区であり、横浜市の地域拠点として位置付けられている。このため、市街地再開発事業や優良建築物等整備事業の推進、誘導を図るとともに、駅前広場等都市基盤施設の整備により、立地特性にふさわしい、土地の高度利用や街並み形成等を推進、誘導している。
――「東神奈川駅周辺地区」の再開発にいたるまでの経緯を聞かせていただけますか?
横浜市:かつての「東神奈川」駅周辺は、1960年前後に建てられた木造建築物が立ち並んでいました。国内有数の乗降客数を誇る「横浜」駅が隣にあるとは思えない光景で、老朽化が進み、防災上の問題も指摘されていましたので、当然として再開発を求める声は挙がっていました。しかし、当時地権者が100人近くもいたため合意形成が難しく、平成に入るまでは膠着状態がつづいていました。大きく物事が動き出したのは再開発組合が設立認可された1999(平成11)年以降です。
まず「東神奈川駅東口地区第一種市街地再開発事業」が進められることになり、老朽化した低層木造家屋が密集する従前の土地利用を更新し、商業、住宅等による土地の高度利用及び防災性の向上を図りました横浜市では、こちらの事業で建設されたマンションを中心とする複合施設「リーデンスフォート横浜」の3階部分に、市内初となる公設民営による「横浜市かながわ保育園保育所」を整備しました。
横浜市:2002(平成14)年に先述の「東神奈川駅東口地区第一種市街地再開発事業」が完了し、それから間もなくして「東神奈川駅前地区優良物件等整備事業」も始まりました。もともとこの土地は「国鉄建設事業団」の土地で、国鉄が民営化したときに「日本国有鉄道清算事業団」が所有していたのですが、売却するときに「横浜市住宅供給公社」が購入。それと同時期に、共同ビルを建設しようという計画が上がり、各区に区民文化センターを建設するという目標を掲げていた横浜市にとっても良い機会でしたので、2~4階を取得して公共公益施設として「横浜市神奈川区民文化センター かなっくホール」をつくりました。
――木造建築物が立ち並んでいた光景が想像できないくらいに「東神奈川」駅周辺は開発が進んだのですね。
横浜市:そうですね。なかなか動き出さなかった再開発事業ですが、動き出してからの展開は早く、連鎖反応的に開発が進むことになりました。先述の再開発事業では、バリアフリー対策として、ペデストリアンデッキで周辺施設を連絡する歩行者デッキやエレベーターを新設しました。
JR「東神奈川」駅と「かなっくホール」が結ばれ、さらに京浜急行「仲木戸」駅が改修工事の計画に際して提案を行い、両駅間もつなげることができたので、現在、京浜急行線からJR線に乗り換える場合、「横浜」駅は混雑するという理由で「仲木戸」駅で乗り換えるという方が多くいらっしゃるようです。
――「東神奈川駅周辺地区」では、「東神奈川一丁目地区第一種市街地再開発」も進行中だそうですね。
横浜市:不可能と思われていたことが現実化したことで、“自分たちもできるのではないか”という前向きな動きが出てきました。
「東神奈川一丁目地区第一種市街地再開発」は2004(平成16)年に準備組合が設立され、2013(平成25)年に都市計画決定されました。2019年3月に地上20階建てタワーマンションが竣工し、同建物には店舗も入居する予定で、「かなっくホール」が入っている建物と通りを挟んだ一画で工事が進められています。こちらも将来的には、ペデストリアンデッキでつながる予定です。
■「東高島駅北地区について」
横浜の新たな都心を担う地区として、該当地区(神奈川区神奈川一丁目、神奈川二丁目、千若町、星野町の各一部)、水域の一部埋立てを含めた都市基盤整備や、都心にふさわしい土地の合理的な高度利用など、総合的な地域の再編整備による土地利用の転換を図ることについての検討を進め、2018(平成30)年6月に「東高島駅北地区土地区画整理組合」の設立が認可された。
――次に、「東高島駅北地区土地区画整理事業」についても聞かせてください。
横浜市:事業名にも付いている「東高島」駅は、東神奈川駅周辺地区と山内ふ頭に挟まれた場所にあります。同駅は東海道本線貨物支線上にありますが、現在は貨物駅舎があるというのではなく、貨物列車の発着もなくなりました。そうした時代の変化を街づくりに反映させるために「東高島駅北地区土地区画整理事業」を進めています。
神奈川区は、横浜市18区のなかでも病床数は下位に位置するため、区画整理事業によって医療施設を設け、健康医療福祉複合地区として研究・教育、医療、健康、居住機能を配置したまちづくりを進めていきます。また、同事業では1.5ヘクタールの水域を埋め立てます。なお、事業区域内に残存する「神奈川台場」は本市開港の歴史的な遺構であり、その多くは土の中に埋まっていると推測されます。そのためこの事業を推進するうえでは、この「神奈川台場」を保全し、現在の「神奈川台場公園」に接続する形で、歴史を後世に伝えていくという計画です。
横浜市:『横浜市都心臨海再生マスタープラン』の事業は始まったばかりですが、これから居住施設の建設が進んでいけば大まかな年代層も分かってきます。それによっては新たな小学校が必要になるかもしれませんし、スクールゾーンの設置など行政が対応すべき事柄が出てきます。そうした動向に注目しながら、横浜の魅力をさらに高めていくことに寄与できれば幸いです。
本記事は、(株)ココロマチが情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、正確を期するように努めて参りますが、内容に誤りなどあった場合には、こちらよりご連絡をお願いいたします。