江東区では、地下鉄8号線(東京メトロ有楽町線)の豊洲以北への延伸を目指して、実現に向けた検討を進めている。平成19年度から豊洲~住吉間に関する独自調査を進めており、平成22年度からは東京都や東京メトロなど、関係機関を交えた検討会を開催するとともに、建設基金の積立てを行うなど、早期整備に向けた取り組みを進めている。
地下鉄8号線の延伸区間(豊洲~住吉間)は1972(昭和47)年に国の「都市交通審議会答申第15号」で、豊洲から亀有方面への分岐が答申され、1982(昭和57)年には帝都高速度交通営団(現東京メトロ)から豊洲~亀有間の免許申請も出されたが、その際は国の認可が下りなかった。
2000(平成12)年の「都市交通審議会答申第18号」でも、豊洲~野田市間が2015(平成27)年までに整備着手することが適当な路線とされたが、2004(平成16)年4月に営団が民営化され東京メトロとなると、副都心線を最後に新線建設を行わない方針を示したため、整備主体が不在となり、計画は宙に浮いた状態となってしまった。
その後、営業主体と整備主体を分離する「上下分離方式」の事業枠組みが国内の新線整備において適用されるようになったため、地下鉄8号線延伸においても、上下分離方式での整備が検討されるようになった。その後、2009(平成21)年には江東区や墨田区といった関係自治体が共同で「地下鉄8・11号線促進連絡協議会」を発足。早期整備に向けて協力しながら関係機関に対して積極的な働きかけなどを行ってきた。
江東区独自の取り組みとしても、2007(平成19)年度から豊洲~住吉間に関する調査を進めており、2010(平成22)年からは東京都や東京メトロなど、関係機関を交えた検討会を開催するとともに、建設基金の積立てを行うなど、早期整備に向けた取り組みを進めている。建設基金の積立ては平成30年度までで累計60億円にものぼる。
江東区内には東京メトロ東西線やJR総武線など、都心方面へ向かう路線は数多くあるものの、南北を走る路線少なく、現在はバス路線での移動がメインとなっている。
延伸計画では東西線との乗り換えができる「東陽町」駅のほか、駅徒歩10分圏外となっている鉄道交通不便地域解消のため、豊洲~東陽町間(枝川付近)、東陽町~住吉間(千石付近)の3か所に中間新駅を設ける予定となっている。延伸区間の両端となる「豊洲」駅にはゆりかもめ、「住吉」駅には半蔵門線と都営新宿線が通っており、行き先に応じて路線を乗り換えることができるようになるだろう。
また、延伸によって周辺の既存路線と結節することで、東京臨海地域から東京23区東部を南北方向につなぐネットワークが強化され、利便性が大きく向上するだけでなく、東武スカイツリーライン沿線の23区北部から埼玉県方面、都営新宿線や東京メトロ東西線沿線の23区東部から千葉県方面にかけてのエリアの都心方面へのアクセス時間も短縮されることが期待されている。
さらに、東京メトロ東西線の通勤ラッシュ時の混雑率が最も激しい木場~門前仲町間の手前で別路線と乗り換えができるようになるため、混雑緩和が見込まれる。江東区の試算では、実現した場合2030年の想定で、東西線はマイナス19%、京葉線はマイナス11%と混雑率の緩和が見込まれている。
延伸先の「豊洲」駅をはじめとした湾岸地区は、企業の本社や研究開発拠点などの東京へのより一層の集積を目指す外国企業誘致プロジェクト「アジアヘッドクォーター特区」の東京都心・臨海地域エリアに指定されており、新技術・新サービスを創造する魅力的な市場を形成することを目指している。また、湾岸地区は2020年の東京オリンピックの各種競技場、豊洲市場など、新たな施設も次々と誕生しており、そういった施設へのアクセスも便利になるだろう。
JR東日本が早期実現を目指している羽田空港アクセス線も期待大だ。羽田空港アクセス線は、現在は貨物線として利用されている路線を使用して、臨海部・東山手・西山手の3ルートから羽田空港へアクセスできる新路線を開通させる計画となっている。このうち、臨海部ルートは「天王洲アイル」駅付近からりんかい線に乗り入れ「新木場」駅方面へ運行されることになっているので、東陽町を含む江東区など、東京東部エリアから羽田空港方面へのアクセスが向上するだろう。
8号線延伸によって、都心方面だけでなく、湾岸地区へのアクセス性も向上する「東陽町」駅。現在でも江東区の中心地としての役割を果たしている駅だが、延伸が実現すれば、「東陽町」駅の重要性はさらに上昇することだろう。
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